ボタンを押せば淹れたてコーヒーが飲める時代。
ファミレスのドリンクバーでは当たり前でしたが、コンビニに普及したのはごく最近のことです。実はファミレスのコーヒーとコンビニのコーヒーでは、淹れ方がまったく違います。
ファミレスはエスプレッソ方式
=蒸気圧で短時間に抽出
コンビニはドリップ新方式
=挽いた豆に空気を送り込み湯の中で撹拌して抽出
ドリップ方式というのは普通にやると時間がかかります。
だからトーヨーベンディングの自動販売機「ミル挽き珈琲アドマイヤ」は、待ち時間の間、抽出の実況中継を見せて間をもたせています。
短時間で抽出するには、エスプレッソ方式が向いています。
しかしコンビニはドリップ方式にこだわりました。そこには、30年にも及ぶセブンイレブンの試行錯誤がありました。顧客の反応、店のオペレーションを探りながらの仮説と検証の繰り返し。明確な仮説が技術の進化を引き出しました。技術と仮説は、両輪なのです。
出典:セブン-イレブン会社情報
セブン-イレブンが最初にレギュラーコーヒーの提供をはじめたのは1980年代初頭。1時間おきにサイフォンで落としたコーヒーを小分けして出していました。しかし忙しさの中でサイフォンの作業がままならず、失敗。
1988年からは一杯ずつドリップで落とすマシンをキーコーヒー(当時木村コーヒー)と開発。注文を受けてから抽出するので美味しいコーヒーの提供ができるようになりましたが、構造上ポットに残ったコーヒーが焼けて焼き芋のような匂いが店内に充満しボツに。
1990年代には、カットリッジ方式に転換。これはコーヒーの風味が飛んでしまって失敗。このころから徐々に、スターバックスのエスプレッソ系のコーヒーが流行りはじめました。
それを横目で見ながらセブン-イレブンは、2002年からセルフ方式のエスプレッソマシンをバリスターズカフェとして導入しました。若者を中心に順調に売上をあげましたが、缶コーヒーの売上の1/30以下で、大きな流れをつくるまでには至りませんでした。
ここでセブン-イレブンが学んだことは、巷で流行っているエスプレッソ系のコーヒーは、セブンイレブンの幅広い顧客層にとっては、ごく一部の顧客にしか好まれない。ということでした。「万人受けするのはペーパードリップ方式の、引っ掛かりのない飲みやすいコーヒー」という仮説を立てました。
その仮説をカップコーヒー自販機の最大手、富士電機にぶつけて共同開発したのが現在のコーヒーマシンです。一杯ずつ豆を挽いて、空気を送り込みながら湯の中で撹拌する新しいドリップ方式を開発。店舗でのメンテナンス性も配慮した設計になっています。2013年にスタートしたセブンカフェは全国1万7千店舗で120杯/1日を販売するまでに成長しました。
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