セブン&アイ・ホールディングス会長退任会見で、私が注目したのは、

1.鈴木会長が社長の資質として、改革を主導することを特に重視している点

2.オーナーの影響力

1.については、前回↓書きました。

セブン-イレブン会長退任劇と改革へのこだわり
4月7日、セブン&アイ・ホールディングスの鈴木敏文会長兼CEOが退任の会見をしました。驚きました!「経営」という視点で、いろいろな切り取り方のできる、たいへん貴重な臨場感のある題材です。 会見の模様は、こちら↓で全文読むことができます。 …

今回は、2.オーナーの影響力について。

鈴木敏文会長といえば、名実ともにセブン-イレブンをゼロから育て上げた立役者。83才は引退してもおかしくない年齢ですが、今回の退任劇はその年齢が原因ではありません。

つまるところ、セブン&アイ・ホールディングスのオーナー伊藤雅俊名誉会長(91才)に、鈴木会長の人事改革案を拒否されたことが原因です。しかしこれは株式会社というシステムからすると異様な状態です。

イトーヨーカ堂の創業家である伊藤雅俊名誉会長は、セブン&アイ・ホールディングスの10%の株を保有しているに過ぎません。鈴木敏文会長の0.1%に比べれば桁違いですが、セブン-イレブンのオーナーとはいえ、大株主の一人であるに過ぎません。さらに指名・報酬委員会のメンバーでもありません。

結果的には取締役会で人事改革案が賛成7票、反対6票、白票2票で否決されることになりました。

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つくづく会社というものはオーナー=創業者のものだと感じます。

私はソニーで、偉大な二人の創業者を失ってからの、社長や会長と呼ばれる人たちの苦悩と、会社の迷走ぶりを見てきました。転職した中小企業では、オーナーかつ社長の経営に対する迫力、パワー、孤独を勉強させてもらいました。

本来株式会社というシステムは、オーナーは株主であり、創業者がいなくても経営が継続するように作られているはずです。しかし会社の実態は、創業者がオーナーとしての影響力を持ってしまう人間くさい組織であることに変わりはなく、システムと数の論理だけで割り切れる場所ではないようです。

大塚家具やクックパッドなど、このところ創業者の経営への介入で会社が混乱する場面が目につきます。企業の永続的な経営の難しさは、創業者がいる間に、創業者の影響力を創業者自らが排除していかなければならないという、創業者にとっての自己矛盾的な作業にありそうです。