「見ている方が楽しいと思う将棋を指すのがプロの一番の定義」
という阿久津主税(ちから)八段

プロ棋士とコンピューターが対戦する「電王戦FINAL(ファイナル)」の最終第5局に向けて、阿久津八段は事前にコンピューター側の将棋ソフトの研究を進める中で、「ハメ手」と呼ばれる人間相手では使わない手で勝てることを知ります。

阿久津八段は、本番でもこの「ハメ手」を用いてわずか21手でコンピューターに勝利しました。

それに対して、

労力ゼロのハメ手で勝つのは、プロとしてどうか?
プロ棋士のセンスを見たかったのに、、、

など、批判的な声が出ました。

阿久津八段もこの手を使うのは葛藤があった。と話しています。

 

しかし、私は阿久津八段の勝利は、意義ある素晴らしい勝利だと考えます。

 

そもそも「ハメ手」という言葉の意味がよくわかりません。将棋というのは相手をハメて、勝つゲームです。勝った棋譜はすべてハメ手なのでは。

人対人では使わない手だから「ハメ手」だというのなら、それこそ対コンピューター戦というものを勘違いしているように思います。対人だろうが、対コンピューターだろうが、相手の弱点を鋭く突いて最短で勝つのがプロです。腕力が強いほうが勝つと思っているのは素人。腕力もあって、相手の隙も突けるヤツが最強です。そしてたいてい腕力勝負よりも、弱点を突いたほうが勝負は早いのです。

見ている方を楽しませるのがプロ、というのなら、今回の勝負は十分見ている方を楽しませたのではないでしょうか。対コンピューター戦でしか出てこない戦法が出たということは、まさに電王戦の醍醐味。第2戦でもコンピューターのバグを突いて人が勝利しました。この二つの勝利は、来るべき人工知能社会に対する明確な警鐘です。コンピューターは永遠に弱みを持ち続けるのです。完璧ではありません。完璧でない人間が完璧でないコンピューターをどのように使いこなすのか。それが人類の大きな課題なのです。

タイタン
Supercomputer Titan

 

そもそも将棋などほとんど興味のない私が、電王戦で2つも記事を書いて楽しませてもらい、将来の人工知能に制御される世の中に思いを馳せているわけです。プロ棋士対コンピューター将棋、今後も是非続けて欲しい企画です。

 

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