「来年はイノベーションしよう!」
「おー!」

と意気込むだけでは、
イノベーションが生まれないのは、
誰にもわかることなのですが、
似たようなことをやってしまうのが、
集団、組織というものです。

日本という大きな集団であっても、
零細企業という小さな集団であっても、
意気込みだけではイノベーションが
生まれないのには、理由があります。

 

それは集団のもつ必然的な弊害とも
いうべきもので、どんな集団でも
避けることはできません。

一言で言えば、
集団ひとりひとりの心理的抑圧です。

口では新しいことにチャレンジしたい。
と言っていても、
行動は新しいことには向かわないのです。

それはなぜか?

 

AV家電メーカーの例で説明すると、
わかりやすいと思います。

テレビは長く花形商品でした。
テレビのない家庭は考えられません。
テレビの売上がAV家電メーカーの売上を
支えていました。
そんなときに
「テレビはコモディティになった。
すぐに誰でも安く製造できる時代がくる。
テレビに代わる花形商品を開発しよう。」
と言って、
すべてのリソースを、新商品開発に
振り向けることができるでしょうか?

そんなことをしたら明日からの従業員の
給料が払えません。
一部のリソースを新商品開発に向けるのが、
妥当な判断です。

ここでテレビに関わる人達が、
どのように新商品開発部隊を見るのか?

彼らの給料は、俺達が稼いでいる。
彼らの成功の確率は極めて低い。
いつ成功するのか、まったく見えない。
俺達は毎日汗水たらして働いているが、
彼らはゆったり議論に時間を費やしているように見える。

嫌味

一方、新商品開発部隊は、
そういう社内の視線、プレッシャーを感じながら、
まったく成果を上げないわけにも
いかなくなります。
すると、成功の確率が読める改善、
成果の出やすい目先の開発を
進めることになります。
しかしそれは改善であって、
イノベーションではありません。

お互いが、
こう思うのも無理もありません。
今までうまくいってきたことを、
着実にやり続けることによって、
組織の継続が成り立ってきたことは、
誰にも否定出来ない事実ですから。

その事実は実感できても、
このままやり続けることは、
尻すぼみになる。ということを
実感することができません。
なぜなら尻すぼみのスピードが
あまりにもゆっくりなので、
頭で理解はできても感じることは
できないのです、
ですから行動が伴わないのです。

現実には、イノベーションは社外で起きて、
気づいた時には手遅れ。というパターンを、
どの業界も繰り返してきました。

 

立派なスローガンを掲げる前に、
まずは、イノベーションが組織の中で、
どれほど生まれにくいものか、
という認識を、全員で共有しましょう。
そして同じことをやり続けて、
尻すぼみになった過去の事例
共有しましょう。

スローガンを掲げるのは、
それからでも遅くありません。

 

蛇足:

日本というかつて急成長をしていた国も、
大きな目で捉えれば、
国家としてのイノベーションを生み出す
ことができないまま、失われた10年が
20年、30年になろうとしているように
見えます。

同じことをやり続けて、
尻すぼみになった過去の事例、
こちらが参考になります。
カーナビクリステンセンの破壊的イノベーション、事例
 

 

 
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