前回:使えるフレームワーク、ニーズの束

ニーズの束のフレームワークは、ニーズの発見や分析に使えるだけではありません。そのまま競争戦略の思考ツールとして使うことができます。

ドーナツ戦争をニーズの束と差別化戦略の視点で紐解いてみましょう。

ミスドチョコファッション
出典:チョコファッション ミスタードーナツ

 

セブンカフェドーナツ(チョコオールドファッション)
ミスタードーナツ(チョコファッション)
クリスピー・クリームドーナツ(オールドファッションチョコレート)

のニーズの束

  1. 価格
    セブンカフェドーナツ=100円
    ミスタードーナツ=151円
    クリスピー・クリームドーナツ=190円
  2. 製品そのもの
    セブンカフェドーナツ=ザクザク食感
    ミスタードーナツ=サクサク食感
    クリスピー・クリームドーナツ=しっとり食感+シュガー
  3. サービス
    セブンカフェドーナツ=レジ横ついで買いしやすい
    ミスタードーナツ=カフェ併設
    クリスピー・クリームドーナツ=ダズンボックスでお土産
  4. ブランド
    セブンカフェドーナツ=セブン-イレブン
    ミスタードーナツ=ドーナツ専門店
    クリスピー・クリームドーナツ=アメリカ発祥ドーナツ専門店
 

本当はもっと様々な因子が複雑に絡み合っていますが、ここでは単純化して考えてみます。

★注目★するのは、3社がどこで差別化しているか。
2つのニーズの組み合わせとすると、

 

セブンカフェドーナツ=サービスx価格
ミスタードーナツ=サービスxブランド
クリスピー・クリームドーナツ=サービスx製品そのもの

 

老舗ミスタードーナツは、ドーナツといえばミスタードーナツというほど日本におけるブランド力を持っています。持ち帰りとしても最適ですし、カフェも賑わっています。

クリスピー・クリームドーナツは、独特のおいしさで強気の価格、製品の見た目が美しくお土産に喜ばれます。

セブンカフェドーナツは、コンビニでコーヒーと一緒についで買いしやすく、価格を安く抑えています。

 

こうしてみると、サービスの領域で住み分けをしながら、それぞれの強みを発揮できるニーズ適合を行っています。このまま平和に共存できればよいのですが、各社毎年売上を伸ばすためには、他社の領域に攻めていくことになります。

コーヒー市場に殴りこみをかけ勝利したセブンカフェをはじめとするコンビニは、勢いに乗じてドーナツ市場にも攻め入りました。コーヒーのついで買いでドーナツを買ってもらうだけでなく、コンビニ内に簡易的なカフェエリアを設置することで、ミスタードーナツのカフェ顧客までも奪おうとしています。

ミスタードーナツは奪われた顧客を埋め合わせるために、より美味しく見た目に美しいドーナツを求める顧客にアプローチします。4月9日から売り出す新商品「ブルックリン メリーゴーランド」は価格194円。

クリスピー・クリームドーナツはミスタードーナツに対して、面を広げるために出店攻勢をかけています。ドーナツ好きの顧客のうちの一定の割合に買ってもらえるとすれば、面さえ広げれば売上はアップします。

 

このように、ニーズの束とそれに対する差別化戦略を整理すると、ぼんやりとしていた顧客ニーズと競争戦略が明確になってきます。

 

私はミスタードーナツが高品質商品を広げてきたということは、コンビニとの低価格勝負をミスタードーナツが諦めた。と見ています。しかしそれでは売上が確保できないので、矢継ぎ早に100円セールを売って、既存顧客の流出を防いでいます。セブンカフェが製品そのものの質を上げて、「まるで作りたてのような美味しいドーナツ」と言ってくるときのために、ミスタードーナツは今から手を打っておく必要があります。高価格帯に追いやられると、顧客数が減少し売上がダウン。やがて肥大化した固定費が維持できなくなり破綻することになります。

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