今日は5月になったというのに、
少し肌寒いですね。

 

この冬も、私のズボンの下、シャツの下で、
大活躍したのは、ユニクロのヒートテック。

 

2012年までの10年で累計3億枚
という大ヒット商品。

 

一時期、ユニクロは、
「みんなが着てるユニクロを、
外で着るのははずかしい!」

と、売上急落したことがありましたが、
下着ならそんな心配ないですね。
見事な戦略。

 

そんなヒートテックの繊維素材を
供給しているのは、
どこか知ってますか?

 

化学繊維大手の東レですね。
2012年の決算も、ヒートテックの
おかげで他部門の苦戦の穴埋めが
できたようです。

 

では、この画期的な機能性繊維の
開発は、どのようなステップで
行われたのでしょうか?

 

    1. 東レが機能的な素材を開発する。
    2. ユニクロに売り込む
    3. ユニクロが素材を下着にする
    4. たくさん売れる
 

なんとなくこんなステップなのかな、
と想像してしまいますよね。

 

これがまるで違うのです。

 

もともとヒートテック以前から、
東レはユニクロに、防寒アウター用の
繊維素材を供給していました。

 

しかし東レはコスト的に台湾、韓国に勝てない。
付加価値で勝負しなければ負ける。
という強い危機感がありました。

 

そこでユニクロの担当者と、
「世の中にないものを共同で開発しましょう」
とプロジェクトを立ち上げました。

 

ところが、ユニクロの言ってくることが、
突拍子もないことばかりで、
東レの技術陣は当初頭をかかえたといいます。

 

「洗濯しなくてもいい服」
「ガンガン洗濯機で洗えるセーター」

 

そしていつも最後にはこう言われました。

 

東レさんならできますよ!

 

無理だと思いながらも、
東レの技術陣は、
その都度必死になってアイデアを
振り絞って、努力を続けました。

 

そんな中で、吸水速乾機能をもった
中空紡績糸の開発に成功し、
夏物メンズ用インナーとして商品化
されました。

 

そしてこの技術をさらに秋冬用の
インナーに応用したのが、
ヒートテックなのです。

 

開発当初、
東レはこんなコア技術を持っていました。
      • 吸湿発熱効果を持つレーヨン繊維
      • 高い保湿性を持つアクリル繊維
      • 速乾性を実現するポリエステル
 

しかし、誰がどんな使い方をするのか、
最終ユーザーの求めているものを、
代弁できたのは、ユーザーに直接
販売しているユニクロの担当者でした。

 

そして、
「この技術を組み合わせれば、
こんな機能ができるかも。」

 

という発想ではなく、

 

できるできないを
まったく考慮せずに、
ユーザーサイドの都合を
あくまで押しつける厳しい要求が、
東レの技術開発を促進したのです。

 

多くの飛躍的に売上を伸ばした、
新商品開発は、
このような形で、

 

厳しい顧客

 

の存在がポイントになっている
ことが多いのです。

 

自社商品を開発する中小企業は、
「幸運」にも、
自分たちで技術を開発して、
自分たちで商品を設計して、
自分たちで商品を販売しなければ
ならないことがほとんどです。

 

自分たちの中で、
東レの立場、ユニクロの立場
を二重人格のように、
持ち合わせていることが重要です。

 

そしてさらに、ユニクロのように、
最終ユーザーに直販することで、
顧客とのコミュニケーションを
活用して、
顧客の代弁者になる必要があります。

 

その顧客の厳しい意見ほど、
飛躍のための重大なヒントになるのです。
その無理難題になんとか応える中から、
飛躍の種は生まれます。

 

直販をして、厳しい顧客に向き合いましょう。