吉野家は2014年4月、牛丼の味改良を発表しました。
100年続く吉野家の牛丼の味を変える、ということは大きな決断ですが、この味を決めているのはいったい誰なんでしょう?
社長?
開発責任者?
開発担当者?
最終的な決断はもちろん社長です。
でもさまざまな材料や技術、仕入れ、品質管理手法などを検討して取り入れていくのは、現場の開発担当者です。それをマネジメントする責任者。
つまり吉野家の会社の組織のあらゆる人達が、味の決定に関わっています。では、どんな方向性で、どのレベルを超えれば、吉野家の「うまさ」を守り、受け継ぐことができるのでしょうか?
どこかに文章で書いてあるのでしょうか?
味覚センサーかなにかで数値化されているのでしょうか?
それに近いものはあるかもしれません。
でも最終的には、食べてみて、「もうちょっと出汁の味はこう」とか「肉の熟成はどう」「ワインの香りが少し強すぎる」とか、、、感覚的なもので決めていくしかありません。
町のレストランであれば、チーフシェフがひとりで味を決めていくことができるでしょう。吉野家で社長が逐一味の選択のジャッジをすることはできません。現場である程度完成した試作をいくつか並べて、比較しながら、方向性を決めていく。そういった作業の積み重ねです。
最終判断をする社長でさえ、個人的な趣味で判断することはできません。長く続いた味の伝統を、経験、理解したうえで、「吉野家の味」を守る必要があります。
出典:Wikipedia photo by Opponent
つまり、吉野家の組織の中に、「見えない知」が埋め込まれています。その「見えない知」は、社長、社員、ひとりひとりの中にもあります。見えないけれども間違いなくあるのです。
次回は、「見えない知」について掘り下げます。