ソニーに入社して何年かすると、係長代理試験という関門がありました。最低限のマネジメント知識と論理的文章力、そしてソニー愛を試す試験でした。そこでエンジニアもそうでない社員も勉強するのが、B/S=バランスシート(貸借対照表)、P/L=プロフィット&ロス(損益計算書)。どちらも経営指標としては基本中の基本ですが、当時研究所にいた私には知識としては理解できても、実感としてはまったく雲をつかむような感覚でした。微積分をはじめて習った高校生の感覚です。

そろばん

今ではシンプルに実感しています。プラス、マイナスで説明してみましょう。

”+(プラス)”、は「足す」ではなく、「増える」または「得」です。
”ー(マイナス)”、は「引く」ではなく、「減る」または「損」です。

2000万円の元手でなんとか儲けたい=プラスにしたいとします。2000万円を現金のまま寝かしておいても、昨今の金利では増えるのは雀の涙にも足りません。そこで、1000万円でなにかを買って、1500万円で売れば500万円の儲け(粗利)=得になります。

たとえば空間的障壁を利用して、相模湾で朝一で獲れた新鮮な生しらすを1000万円分買い込んで、独自の冷蔵技術でその日の都心のランチの仕込みに間に合うように配送するとします。

仕入れや配送費、冷蔵費など含めてとにかく1000万円かかったとすると、まずはマイナス1000万円と考えるのがP/Lです。1000万円元手(資本金)が減ったわけです。

ではなくなってしまった現金1000万円は消えてなくなったのかというと、生しらすに化けたわけです。つまり生しらすという現物と、どうやって生しらすを手にしたかの1000万円の資本金がバランスしていると考えるのがB/Sです。

次にいよいよ生しらすを売りさばきます。それで1500万円手に入ったら、マイナス1000万円プラス1500万円=プラス500万円の利益(粗利)とそろばんを弾くのがP/Lです。

生しらすが資産として手元にあったときと、売りさばいてしまった時点では、状況が変わっています。もう生しらすは手元にはありません。かわりに2500万円の現金が手元にあります。この現金2500万円と、どうやってその2500万円を手にしたかの元手の資本金2000万円プラス利益500万円がバランスしている状況を整理するのがB/Sです。利益500万円は、それを生み出すためのコスト1000万円と売上1500万円という形でB/S上で表現されます。

B/Sを見れば、2000万円持っていた時に比べると、会社の規模が大きくなっているのがわかります。

P/Lを見れば、この会社がどれくらいの規模の投資をして、どれくらいの効率で回収しているかがわかります。