戦略は表に出ません。
そして戦略思考のプロセスはさらに表にでることはありません。
私達が知るのは、経営者の最後の決断だけなので、あたかも経営者がひとつの戦略を練りに練ったように捉えがちです。
しかし、実際には最後の決断にいたるまでに、多くの葛藤と悩みの中で、たくさんの戦略オプションを天秤にかけながら、最終的に2つに絞り込みます。そして最後の最後は、気合で決めるのです。
吉野家がBSE問題に直面したときもそうでした。
残るのは、すべてが終わってからの成功事例。
この記事で、安部修仁はこのように当時を回想しています。
「実は会社が生きるか死ぬかという不安は微塵もなかった。無借金で、潤沢な自己資金もあったので。牛丼抜きでも半年か1年もあれば、業界のアベレージ並みの利益は出せると……根拠はないけど確信はありましたね」。
迷いもなく決断したかのように書かれています。
表にでる戦略思考とはそういうものです。
これを真に受けて、成功事例の勢いだけをマネしようとするのがもっとも危険な戦略思考です。
「根拠はないけど確信はあった」
記事では、その理由を「安部修仁が乗り越えた1980年の吉野家倒産の経験があったから」と結論づけています。
この倒産の経験から根拠のない確信にいたった部分を掘り下げて、私達がそのエッセンスを学べるとしたらどんなことでしょうか。
次回は、安部修仁が守った「変えてはいけないもの」について分析します。
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