短期的にみると、どんなメーカーにも
浮き沈みがあります。
景気の悪化で売れ行きが悪くなったり、
為替の影響で利益が吹っ飛んだり、
絶好調で売れていた商品が、
徐々に売れなくなったり。
そんなとき、中期的な成長のために、
次へ打開するには、
自分たちのコアを守りながら、
贅肉をそぎ落とし、
新しいことにチャレンジする
必要があります。
今までテレビが売れていた。
ブラウン管から液晶へ、コア技術が変化した。
有機ELは技術が未成熟だ。
この技術を先導すれば、
次世代テレビでは、勝ち組だ。
この考え方は、コアを技術と捉えているようで、
実は「テレビ」という商品を、
自社のコア商品と捉えている考え方です。
テレビという商品カテゴリーでしばらく優位な
ポジションにいたことが、
どうしても忘れられないのです。
だから目新しい技術を掘り出して、
テレビに結びつけようと考えます。
ときおりそれは大成功します。
誰もやっていないことをやるので、
当たれば大儲け。
ハイリスク・ハイリターン。
当たる確率を上げるには、
いろんな新技術を同時並行で開発を進めなければ
なりません。
人材を多量に投入して、開発費用もかさむので、
ローリスク・ローリターン。
では、商品をコアと捉えるのではなく、
技術をコアと捉える考え方とは、
どのようなものでしょうか?
新潟の燕三条エリアは、
17世紀初頭に江戸から和釘職人を招いて以来、
明治時代初頭まで和釘の一大生産地でした。
しかし、関東における大災害で釘の需要が、
飛躍的に拡大したことで、和釘だけでは
需要に追いつかず、洋釘が導入されました。
これをきっかけに、あっという間に、
洋釘が和釘にとってかわりました。
伊勢神宮に奉納された和釘 出典:三条市
和釘の需要を失った燕三条エリアの製造業者は、
ヤスリ、キセル、銅器など他の金属加工に、
業態転換を余儀なくされました。
この話は、商品転換の話をしているようで、
実はコアを技術と捉える考え方です。
釘という市場を失ったときに、
和釘で長年蓄積した技術を使って、
他の金属加工商品へ転換を果たしたのです。
現実には「余儀なくされた」という状況
であったかもしれません。
しかし、コア技術が次への成長を支えたのです。
いつまでも釘にしがみついているわけには、
いかなったのです。
中長期的にみれば、
守るべきコアは、
商品カテゴリーではなく、
技術なのです。