マラソンで第1集団と第2集団の間には、いつも大きな隔たりがあります。この隔たりがキャズムのイメージです。

第2集団はテレビ中継されることもありません。テレビだけ見ているとまるで存在しないかのようです。つまり第1集団と第2集団は、まったく別の存在なのです。

マラソンイラスト
先頭ランナー=イノベーター
第1集団=アーリーアダプター
大きな隔たり=キャズム
第2集団以降=アーリーマジョリティ
順位半分以下=レイトマジョリティー
最終集団=ラガード

このようなイメージです。
アーリーアダプターは、アーリーマジョリティとは別人種と考えましょう。ですから直販で売り込みたい時、まったく違うアプローチが必要です。そこを混乱している、または意識していないからキャズムを越えることが難しいのです。

いままでにない機能をもった新製品は、革新的というだけでイノベーターが飛びつきます。しかし第1の壁はアーリーアダプターの厳しい評価をくぐり抜けることができるかです。アーリーアダプターは製品の完成度よりもベネフィットを優先します。ここでターゲットにベネフィットを受け入れてもらえない商品は、そもそもなにかが間違っています。

ここで最大の注意を払うことがあります。

この評価は、誰からの評価か?

ここを見誤ると、間違った方向へ舵を切ることになります。ターゲット=アーリーアダプターの評価なのか、アーリーマジョリティの評価なのか。

アーリーマジョリティは、購入にあたって安心感を重視します。つまり製品が完成度が高さが決め手です。たとえベネフィットがターゲットにドンピシャではまっていたとしても、枝葉の完成度が低いものはアーリーマジョリティには受け入れられません。

一方アーリーアダプターはベネフィット重視ですから、枝葉よりもベネフィットが自分にフィットするかどうかを評価します。新製品の評価を初期の改善活動に反映させるなら、アーリーアダプターの評価に耳を傾ける。もしくはプロトタイプの段階で、アーリーアダプターの評価を取り込む。この段階ではアーリーマジョリティの不満には目をつぶる。それが製品の基本的なベネフィットを市場にフィットさせる効率的な方法です。

ベネフィットをフィットさせないまま、あるいはアーリーアダプターの悪評を放置したまま、アーリーマジョリティにプロモーションをかけても、惨敗が目に見えています。多くの新製品がキャズムを越えることができず市場で消えていくのは、アーリーアダプターの評価プロセスを省略または軽視することが大きな原因です。