「最大18時間しか電池が持たない腕時計なんて、誰が買うんじゃい!?」
それが買う人がいるんです。
理解不能な人、続出。
でもAppleは今そういっている人にも、
何年か後にはApple Watchを買ってもらおうと思っています。
iPodが出た時には見向きもしなかった人にも、
いつかはiPod nanoを買ってもらうように。
アーリーアダプターは、冷静にベネフィットを見極めて購入するかどうかを検討します。
たとえば、このミッキーの動きを見て、「これ欲しいかも」と思うのが、イノベーターとアーリーアダプターです。
イノベーターは何度もミッキーの動きを見ているうちに、胸がドキドキして、いてもたってもいられなくなり、すぐにでも自分の腕につけたくなります。この人にとってのベネフィットは、誰も持っていないミッキーアイテムが手に入る。ということです。
一方のアーリーアダプターは、本当にこれを買って自分は満足するのだろうか。と逡巡します。確かにこのミッキーを手に入れたい。でも他人はこのミッキーを身につけている自分をどう見るだろうか?かわいいと言ってくれるだろうか?もしこのミッキーの動きに飽きたら、どうだろう?Appleは新しいミッキーの柄を次々に提供してくれるだろうか?そのときのアイテムの値段はどれくらいだろうか?
このイノベーターとアーリーアダプターにとっては、電池が18時間しか持たない。ということはデメリットではありますが、決定的に購入意欲をそがれる要因ではありません。それよりもベネフィットが上回れば購入します。
これは「ミッキー」というベネフィットだけに絞って考えてみた例です。Apple Watchのベネフィットは、もちろんミッキーだけではありません。つまりいくつものベネフィットの分だけ、異なるイノベーターやアーリーアダプターの集団があります。それは複雑に重なりあったり離れたりしています。
「着せ替え」というベネフィットに反応する集団。
「ゴールド」というベネフィットに反応する集団。
「健康」「スポーツ」「小さな情報端末」、、、
様々なベネフィットに反応する異なる集団のくくりがあります。
出典:Apple Watch
Appleは、それぞれの集団のアーリーアダプターの評価を最も重視します。そして彼らに最適化するにはどのような商品やサービスが適切か検討します。それらが多くのベネフィットを満足させる場合もあれば、いくつかのベネフィットで対立することもでてくるでしょう。
Appleがどのようにキャズムを越えるのか、戦略を立てるのはそこからです。どの集団を優先的に満足させるのか。どのように満足させるのか。どのようにアーリーマジョリティーに認知させるのか。
ターゲットを絞ってアーリーマジョリティーに楔を打ち込むのです。
電池の持ちを伸ばす。という技術的進化は、その戦略の中において、どのようなバランスで設計するかが最終決定されます。数ある技術的課題の一つに過ぎません。戦略次第ではそれよりも、ミッキーの柄をたくさん供給するほうが先決なのかもしれません。
私は以前、
Apple Watchのターゲットは?
で、
ポケットのない人
がApple Watchのターゲットだと考えました。
でもミッキーのタップの動きを見て、新たなストーリーが浮かびました。
最初のアーリーマジョリティーへの楔は、
「着せ替えを楽しむ人」
ではないでしょうか?
いつもお気に入りのアイテムを腕に持ち歩くという新たなファッションの創造。
その着せ替えアイテムのバリエーションとしての、時計デザインや各種情報閲覧機能や決済機能。
そして最終的に目指すターゲットが、ポケットのない人。
いやむしろ、ポケットのいらない服飾文化をアップルは世界に広めることになるかもしれません。お金とカードと定期と鍵が必要なければ、ポケットはいらないですよね。
ビスケットは、Apple Watchかざせばどこのコンビニでも買えるようになるはずですから。