東日本大震災によって、私達の地震に対する防災意識は間違いなくそれ以前より高まりました。では今回、政府の地震調査委員会が発表した、「関東地域地震発生確率最大で60%」という確率は、人々の意識や行動に変化をもたらすのでしょうか?

マーケティングでいえば、効果的なキャッチコピーは消費者の意識や行動に変化をもたらします。今回の発表で、30年以内に最大60%の確率で関東地域に地震が発生する、ということは理解できます。しかし、「確率60%」という数字を実感しようと考えれば考える程、なにかぼんやりとしてきませんか?さらに「最大」という逃げ口上まで付いています。

過去2011年11月に発表されたのは、

「30年以内にマグニチュード8以上の東海地震が起こる確率は87%」

という予測でした。

「87%」、これはかなりヤバそうな数字ですね。
でも、これもじっくり考えれば考える程、なんかどうでもよくなりませんか?

30年以内に87%って、90%となにが違うのか?
80%と言われた時と、どう意識と行動を変えればよいのか?
事実、87%という数字を根拠に東海地方から大勢の人が引越した。という話は聞きません。

そもそもこの確率、どのように計算されているかご存じですか?地震予測の科学的な手法が毎年進歩して、精度がどんどん上がっているような勝手な思い込みをしていませんか?

クエスチョン

 

実は地震発生確率の計算は、原理的にはかなり単純なものです。たとえばあるエリアで、過去からの大地震の回数が古文書などからわかる限り、およそ平均200年に一回とします。最後の大地震から現在160年経っているとします。するとあと40年以内に1回必ず大地震が起こると仮定するわけです。40年に1回だから30年なら確率75%。と、原理的にはこれほど単純な統計的計算をしているだけです。確率の使い方としてかなり違和感があります。


今回の発表では、関東地域を6つのエリアに分割して、
マグニチュード6.8以上の地震が30年以内に起こる確率を、

糸魚川静岡構造線断層エリア 30~40%
鴨川低地断層帯三浦断層帯エリア 15~20%

などと発表。

6つのエリア全域では、当然過去の大地震の回数が増えるので、周期が短くなり確率が高くなります。

関東6エリア全域 最大60%

地震の科学的メカニズムが少しでも考慮された確率なら、エリアを絞るほど精度の高い地震確率が推定できるはずです。しかしこの統計的な確率の求め方では、狭いエリアでは確率が低く、広いエリアで考えれば確率が高くなります。つまり糸魚川静岡構造帯断層エリアにいる人は、30~40%という数字と、最大60%という二つの数字を持つことになります。

どうしろ、というのでしょうか?

これはルーレットで、赤の1番にあたる確率は2.7%、赤の確率は48.6%だよ。と説明しているのと同じくらい当たり前すぎて笑っちゃうハナシなのです。

せめて、

「日本全国で100年以内に大地震が起こる確率は100%」

くらい言ってくれ!!