ダイソンが日本に進出したのは、1998年。
2006年には金額ベースで3割の
掃除機のシェアを押さえました。
10年ほど前に、掃除機をヤマダ電機に
買いに行ったときのことが忘れられません。
ダイソンは当時から国産メーカーの2倍以上の
値段がしていたので、鼻から候補では
なかったのですが、店員さんにいろいろと
教えてもらっている流れで、こう
聞いてみたのです。
「ダイソンって、どうなんですか?」
その答えにびっくり!「ダイソンはおすすめしません」
ときっぱり。「でも結構売れてるんですよね?」
と聞くと、「ええ、おすすめしなくても、
どんどん売れていくので、
私は国産をおすすめしています」
おすすめしなくてもどんどん売れていく
ようにするのが究極のマーケティングですね。
そのような状態をつくりだしたのは、
広告代理業界でカリスマと呼ばれる
一人の男の力が欠かせませんでした。
「吸引力の変わらない、ただひとつの掃除機」
のキャッチもこの方が考えました。先日その方に直接お話を伺う機会がありました。
「吸引力が変わらない」
という掃除機のニーズは、市場調査をしたら、7番目だったそうです。
出典:ダイソン
ダイソンとの会話から、
その技術への深いこだわりと、
それを表現するデザインを、
どう日本人に受け入れて
もらうかをキャッチコピーに込めました。
市場調査の結果で、7番目であっても、
「ただひとつの」ポジションを築くには、
これしかないと確信しました。
さらに価格もただひとつのポジションから、
売れ筋価格をまったく考慮せずに、
設定されました。
その結果が、
店頭でおすすめしなくても、
どんどん売れていく状態を
生み出したのです。
カリスマは、並外れたセンスを
振りかざしたのではなく、
マーケティングの基本、
USP(Unique Selling Proposition)
とポジショニングに忠実だったのです。