近所にある個人経営の小さなスーパー。
野菜、肉、魚が安くて質が良い。
人気店です。

スーパーの値下げシールは、
閉店間際に貼るのが普通です。
お店の理屈からすれば、
次の朝までもたない売れ残りを
廃棄するくらいなら、
半額にしてでも売上を上げたほうが、
利益率は改善します。

でもこのスーパーは違うのです。
肉の半額シールを貼るのが、
夕方の6時過ぎ、まだまだお客さんが
わんさかいる時間帯なのです。

しかも容赦なくバンバンと
貼っていきます。
その時間帯、
ベテラン主婦たちが目を光らせて殺到し、
半額シールを貼った先から
手があちこちから伸びます、
そしていい肉からどんどんなくなっていきます。

こんなに需要があるなら、
この時間帯に半額にしなくても。
と思うくらいです。

 

この前、凄腕の主婦に出会いました。
肉コーナーのバイトの女の子を捕まえて、
「ねえ、今日はいつから半額シール貼るのよ?」
と問い詰めています。
「はあ、今日は6時15分頃でしょうか」
女の子は、
答えてよいものかどうか躊躇しながらも、
主婦の剣幕に押され、
小さな声でそう答えました。

すると、
「もう、そろそろ15分じゃないの。
もう始めてもいいんじゃない。」
といって、奥から3パックの豚肉を取り出し、
「さあ、これに貼ってちょうだい」
と言って、
その場で半額シールを3枚貼らせて、
すぐに消えていきました。
どうやら、事前に期限の迫った肉の中から、
選りに選った3パックを、
棚の奥の方に隠しておいて、
時間が来たので、シールを貼らせたようです。

 

ここまで凄い人はめったにいないでしょうが、
とにかく半額シール狙いで来店している人は、
たくさんいそうです。

このスーパーの狙いはそこなのです。

お店の都合で売れ残りに
半額シールを貼るのではなく、
顧客目線で半額シールを貼っています。

 

都心なので会社帰りに
買い物する人も多い土地柄。
スーパーの選択肢はたくさんあります。
その中で自分の店を選んでもらうために、
あえて夕方に半額シールを貼って、
いつも半額。
の期待を裏切らないようにしています。

このお店の売れ筋は、
豚バラでいえば、100g158円程度の
比較的安い肉です。
でも半額シールを貼るのは、
100g248円の豚バラだったり、
100g1000円のすき焼き用牛肉など、
売れ筋よりも高価格な肉がメインです。

しゃぶしゃぶ肉

お店からすれば、客単価を下げることなく、
他のものも買ってもらえばいいですし、
お客さんからすれば、
普段よりちょっといい肉が、
半額で手に入るのですから、文句なしです。

 

大手スーパーには真似のできない、
質のよい仕入れができる
個人経営スーパーならではの集客戦略です。