かつお節を削ったことありますか?
小学生のころ、家には「かんな」を逆さまにしたようなかつお節削り器がありました。これでかつお節を削るのは決まって私の役目で、なんとも骨の折れる作業でした。かつお節が大きいうちは比較的楽しい作業なのですが、小さく細くなってくると、もつところがだんだん少なくなってきて、やっかいでした。それでも削りたてのかつお節の香りがふわっと鼻孔を通り抜ける感覚は、すばらしいものでした。
今となってはかつお節の本節(削る前の塊)を見かけることはなくなりました。パックされたものが当たり前です。うちでは小分けしてパックされたものを使っています。かつお節は薄いだけに表面積が大きく、酸化して味が落ちるのが早いので、まとめて袋に入ったものは、保管が面倒なのです。
この小さく小分けされたパックを開発したのが、「にんべん」です。
1969年に「フレッシュパック」の名前で売り出されました。
酸素を通さないポリプロピレン、湿度に強いビニロン、透明で印刷に適したポリエチレンの3層構造のフィルムを使いました。このフィルムはクラレの開発。さらに、小袋に2本のノズルをさして、片方から空気を抜きつつ、もう一方から窒素ガスを充填する方法を開発しました。
こうしてできた「フレッシュパック」。実は発売から1年、まったく売れなかったのです。原因は価格。当時一本200g程度の本節が200円程度に対して、フレッシュパックは5gx5袋入りで100円。[1円/g]対[4円/g]という4倍の価格差の戦いは、大苦戦を強いられました。
この価格差ですから、町の商店では勝負になりません。デパートの贈答用品として売り出しました。初年度結果が出なかったものの、翌年1970年は大阪万博の年。6400万人もの人が入場しました。高度経済成長で国民の生活に余裕が出てきたのです。フレッシュパックも徐々にお祝い用として、売れ始めました。1971年に3億円だった市場は、1978年には500億円市場に成長しました。
ここまで市場が急成長したのは、にんべんが製法特許を開放したことが大きな要因です。そのせいで、一時は200社が参入。もともと90%あったにんべんのシェアは、この間に10%に転落。しかし単純な計算で、2.7億円の売上が、7年で50億円の売上になったのですから、独り占めしなくて大正解だったわけです。
それにしても、4倍の価格差をはねのけたものはなんだったのでしょうか?
それはベネフィットです。
かつお節を削る手間なし
保存性とフレッシュさ
大切な人への贈答品として、たいへん喜ばれたでしょう。
つまり価格が高いほうがよかったのです。
目新しく、高価で、便利で、おいしい。
贈答品として最適
これが初期の真のベネフィットです。贈られて満足した人たちが、口コミとリピーターのトリガーになり、連鎖的に購買が加速したと考えられます。
ベネフィットの追求とターゲットの絞り方
これが直販売上アップのキモです。
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