高校野球、清々しいプレーに大勢の人が惹きつけられ、そして心から選手を応援したくなる魅力にあふれています。

1回戦で強豪智弁和歌山を破った三重の津商業高校。
ベンチにいるけど試合に出ない二人の選手の活躍が話題になっています。



91名の部員の中で、ベンチ入りできるのはたった18名。
プレイの実力ではベンチ入りは不可能、と悟った二人は、コーチャー専属でベンチ入りを目指す決心をしました。そしてチームの勝利に貢献するために、コーチャーの役割、技術を徹底的に磨き抜きました。その実力を監督にも認められ、二人揃って、一塁コーチャー、三塁コーチャーとして甲子園のベンチ入りを果たしました。

たとえば、智弁和歌山戦での津商攻撃2アウト2塁でセンター前ヒットの場面。2塁ランナーを3塁に留めるかホームに突っ込ませるか、3塁コーチャーの判断になります。浅いヒットだったので、普通の判断なら3塁でストップさせるタイミングでしたが、津商3塁コーチャーは迷わずランナーをホームに突っ込ませました。

3塁コーチャーは、智弁和歌山センターの直前の打席を観察していました。彼のバットの振り方、投手との間合いの取り方を見て、「この選手は大事な場面で力任せになる」と見切っていました。

結果は、予想通りセンターの返球がダイレクトになり暴投。勝ち越しの貴重な1点になりました。

彼らをベンチ入りさせた監督の決断力も素晴らしいし、その期待にこたえる二人のコーチャーも見事です。

津商上嶋選手

津商上嶋選手



出典:https://twitter.com/lwr1fh62fukpzjj

 

彼らは、コーチャーを極めているので、様々なアクションで走者にメッセージを送ったり、相手にプレッシャーをかけたりしています。それが度を越すと審判から、「あまり動かないように」と注意を受けることもあるそうです。

彼らはそれに対する対策も怠りません。

 

「審判の方には必ず『よろしくお願いします』ってあいさつをして頻繁に話しかけるようにしています。『熱中症に気をつけてください』とかルールでわからないことがあったら質問してみたり。そうして親近感を持ってもらえるようになれば多少、大目に見てくれるかなと思って」

出典:ThinkTime

 

高校野球では、ルールを守ることは絶対ですが、その立ち居振る舞いまでもが厳しい目で見られています。私達には見えないところで選手たちはプレー以外でも窮屈なシキタリを受け入れざるを得ないことがたくさんあるかもしれません。そんな中で、「大目に見てもらう」ための「シタタカさ」を研究している津商のコーチャーから、私たちは見逃しがちな大切なことを学ぶことができます。

確固たるルールや明文化されないシキタリの中でも、目標達成のためにギリギリの工夫によって壁を突破することはできる

ルール違反はもちろんダメですし、シキタリにもなんらかの意味があるから従うべきでしょう。しかし、ルールやシキタリというものは、たいてい成立したときの基本理念からわずかに離れて、形式化しがちなものです。意味よりも言葉に引きづられてガンジガラメになった経験は、誰にでもあるでしょう。

ルールを破ったり、シキタリを否定することなく、ギリギリのほんの少しのチャレンジというものが私は大切だと思っています。それがまったくない世界は、思考停止、ルールやシキタリの奴隷の世界です。

 

私達は日本の3塁コーチャーとして、安倍首相をいったん選びました。彼はなかなかシタタカに国際環境と国内環境を観察しています。憲法と日米安保という絶対的ルールの範囲内でギリギリのところを狙ってきました。その判断が正しいのか正しくないのか、それは歴史が決めることであって今時点では誰にもわかりません。今議論できるとすれば、そのギリギリが私たちの許容範囲を超えているのか、ギリギリ許されるのか。ということであって、「これはルール違反だ」と決めつけて思考停止に陥ることではありません。

絶妙なバランスでなんとか保っている世界の中の日本のポジション。日本の平和。そして停滞する日本の経済。

日本がセンター前にヒットを打った時、1点とれるかとれないか。それが次の日本の100年を決めるかもしれません。いつまでも世界の中で輝く日本であってほしい。シタタカな3塁コーチャーを続投させるのか、別の3塁コーチャーに変えるのか、とりあえず先送りにするのか、監督は主権者である私達ひとりひとりです。