1998年夏の甲子園、PL学園はエース松坂率いる横浜高校と準々決勝で対戦しました。

春の甲子園優勝校の横浜を崩すには、エース松坂をいかに攻略するかがポイントでした。PL学園はある秘策を胸に横浜との対戦に挑みました。

2回裏PL学園の攻撃、先頭バッターがヒットで出塁。その後1アウトニ、三塁でセンターへの犠打で1点先取。続いて2塁打で追加点。さらにヒットで3点目を追加。それまで甲子園でわずか1点しか与えていない松坂を攻め立てました。

実は、PL学園のバッターは、松坂の投げる球種がストレートか変化球かをあらかじめわかったうえで、フルスイングしてヒットにつなげていたのでした。

野球スイング

ストレートのとき、横浜のキャッチャーはコースに移動するときに腰を低く膝を地面につけて移動。変化球のときには腰を浮かせ気味に膝を地面につけずに移動する癖がありました。松坂のキレのある変化球を受けるためにいつのまにかそうなっていました。3塁コーチャーは、横浜のキャッチャーの構えを観察し、ストレートのときは、「イケイケ!」と叫ぶ。変化球のときは「狙え狙え!」と叫ぶ。そうやって松坂の球種をバッターに教えていました。

不審に思った横浜の指導部長がこの秘策を見破り、4回以降は互角の戦い。7回からPL学園は上重が登板。延長17回におよぶ伝説の死闘を繰り広げました。



3塁コーチャーは一般には目立たない存在ですが、相手の守備能力を見極める重要な役割を担っています。外野手の送球能力の見極めが大事なことは想像がつきますが、まさかキャッチャーの癖で投手の球種を見破っていたとは驚きです。高校野球でも専門の3塁コーチャーをベンチ入りさせるケースは珍しくないそうです。

日本一の3塁コーチャー、阪神の高代コーチによれば、優秀な3塁コーチャーを育てるには、失敗しても絶対に責めないことが大事だそうです。「おい!なんで回したんだ!」などと一度でも言うと、迷ったらランナーをストップさせる消極的な3塁コーチャーになってしまう。「お前に任せたんだから、判断が裏目に出てもイイ。自分の判断を信じて思い切りやりなさい!」と言い続けてあげなさいとのこと。

部下への指導や子育てにも通じるハナシですね。