高校の恩師塩崎勝彦先生の著書、
[#1]
を因数分解せよ。
ちょうど因数分解を習ったばかりの娘に、
さっそく解かせてみました。
ここでストップ。
30年前の自分を見ているようでした。
こういう人を、塩崎先生は、
腕力派
と呼んでいました。腕の力だけで猪突猛進、
そして壁にぶち当たって討死。
あるいは壁を突き破ったはいいが、
汗びっしょり。
娘に「腕力派」の説明をしていたら、
「ああ、そうか」
と言って、
と置いて、
と、まあ途中右往左往しながらも、
なんとか因数分解できました。
ここまでできる人を、塩崎先生は、
素人
と呼んでいました。素人は、教わったことを、
使いこなして、解答にたどりつく。
上手な素人もいれば、
下手な素人もいる。
私は、若干偉そうに、
「ここからがプロの世界や」
と宣言し、娘にヒントを与えました。3つの連続する整数の和は、
真ん中の整数の3倍に等しい。
という証明問題。
最初の整数をnと置くより(A)、
真ん中の整数をnと置いた方が(B)、
計算が美しくなかったか?
A:
B:
娘は、「ああ、そうか」
と言って、
とすると、
ここで、「おー!」と、自分で書きながら、
その美しさに
感心していました。
人に「おー!」とうならせるような
美しい解答が書ける人を、塩崎先生は、
プロ
と呼んでいました。塩崎先生の数学の授業は、
ただ問題を解くだけではなく、
解法を3段階評価していました。
腕力派、素人、プロ
そして必ずプロの世界を実践的に見せる授業でした。
プロと素人の差は、あまりにも大きく、
常にプロは遠い存在でした。
どんな問題でも、別解がある。
工夫すれば、楽に早く正確にゴールに
たどり着く。
塩崎先生のメッセージは、
プロを目指せ
ということだったのでしょう。塩崎先生は本当のプロでした。
どんな難解な大学入試問題も5秒で
頭の中で解ききっていました。
そして高校の時には知らなかったことですが、
毎年、年明けからその年の入試問題を手当たり次第に
解いていき、その数は4月末までに約1500題。
修学旅行の引率のバスの中で、
大量の問題を次から次へ秒殺しているのを
生徒に目撃されています。
仕事をするうえで、塩崎先生のようなプロには、
なかなかなれないかもしれません。
しかし、
常に工夫、改善を凝らし、
楽に、早く、正確に、
ゴールを目指す存在でありたいと思います。
娘は、塩崎先生の解答を読み、
プレゼントとして出された問題
にチャレンジ。
手伝ってもらいながらも、なんとか因数分解ができて、
プロの世界、数学のおもしろさ、美しさを、
垣間見たようでした。
塩﨑勝彦先生、
クリエイティブ・コモンズ・ライセンスで
「数楽しませんか?」を
電子書籍で刊行いただいた奥様の塩﨑慶子様、
深く感謝いたします。