その製品を手に入れたいという欲求を、人々の間に喚起させなければ、いかに優れた「製品」であっても「商品」にはなり得ない。
盛田昭夫
前回は、盛田昭夫のいう、
「その製品を手に入れたいという欲求を、人々の間に喚起させる」
という部分で、「喚起する」とは人々のこころの中でどんな変化が起きているのか、共感覚と共鳴現象で説明を試みました。
喚起する=マーケティングと言い換えれば、
マーケティングとは、
ヒトにあらかじめあるモノに関する知識や印象を埋め込んでおき、それらと響きあうような刺激を与えることで共鳴現象を積極的に励起し、そのモノに、特別な感情を抱かせることで購入行動に結びつけるという手法
という言い方になります。
つまり、刺激を与えるだけでは喚起させることはできず、共鳴する種があらかじめ対象とする人の中に埋め込まれていなければ、そもそも共鳴現象は起こらないということです。
では、その種=あるモノに関する知識や印象を、あらかじめ埋め込むことはできるのでしょうか?
テレビのコマーシャルは、特徴的な印象を何度も何度も繰り返し抱かせることで、それを達成しようとしています。ただしターゲットを絞るのが難しいメディアで、どうしても広く浅い刺激になりがちですから、向いている商品と向いていない商品があります。なにより莫大な予算が必要です。
空から雨を降らしているようなもので、傘をさされてしまっては影響を与えにくいですし、建物の中でそもそも雨が降っていることすら気づかないという人も大勢います。
それより特定の人に向けてホースで水をぶっかけるほうが、効果的です。しかし特定の人=ターゲットをどうやって見つければよいでしょうか?手当たり次第、身近な人にホースで水を巻いたら、ほとんどの人は嫌がるでしょう。選挙カーなんかは、この作戦です。
つまり、広く浅く、も、ピンポイント、もかなり非効率な埋め込み方です。
結局、「埋め込む」という非効率な道を選ぶよりも、もともと人の心の中にあるもの=種に、共鳴する刺激を与えるほうが、効率的です。
つまりこちらが与える刺激に共鳴する種をもった人を選んで、その刺激を与える。ということになります。これが「ターゲットを絞る」という作業です。