東京オリンピックのメイン会場、新国立競技場の屋根がオリンピックに間に合わないそうです。屋根、屋根と報道されていますが、これ実は屋根ではないんです。法的には「開閉式遮音装置」です。
出典:新国立競技場
上の絵の、真ん中楕円形に凹んでいる部分。
どうみても屋根なのに、どうしてこんなへんてこな名前になったのか?その経緯がなかなか含蓄があります。
ひとことで言うと、法を遵守するためのトリックです。
この競技場はサッカーやラグビーの国際試合に対応するために、天然芝である必要があります。つまり太陽光が必須。一方、音楽イベントの開催にも使うため、遮音が求められます。これを両立するのが、開閉式屋根です。
ザハ・ハディドのデザインは、ラ・フェラーリにも通じる流麗な曲線で構成されています。この複雑な曲面を開閉式にするには、膜構造の折り畳み式にする以外にありません。建築基準法的には膜構造の大規模建築には、屋根は不燃性材料が絶対条件。たとえば膜構造の東京ドームは折り畳めません。火災など災害時の安全性を確保しています。ところが、この基準を満たす不燃性の折り畳める膜はこの世に存在しません。不燃材というものは固いのです。
ということで、苦肉の策として、
「いやいやこれは屋根ではありません。開閉式の遮音装置ですが、なにか?」
と言うことにした。ということです。
役所というところは、こういうことが通用するところです。
それにしても、報道で「屋根が間に合わない!!!」とみんな言いまくっているところを見ると、やっぱり「屋根」なんですね。
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