【最低価格保証】

「他店が1円でも安い場合、それよりもお安く提供します」

家電販売のエディオンなんかが、こう宣言しています。
格安航空のジェットスターも同様の制度を取り入れています。

「消費者想いで業界一頑張ってるいい会社だなぁ。」

普通は思います。でも実はそうでもないんです。

 

たとえば、近所にきゅうりが買える店が2ヶ所あるとします。
隣通しのスーパーと八百屋さん。

ある日、八百屋さんがきゅうり5本150円で売っていて、スーパーが160円だとすれば、似たような品質ならお客さんはみんな八百屋さんできゅうりを買います。スーパーの野菜担当者は、翌日「よーしそれなら」ということで5本140円に値下げします。その日はお客さんはスーパーできゅうりを買うことになります。そのまた翌日八百屋のおじさんは、「なにおー!」と頑張って、5本130円にして巻き返します。

そうやって普通は競争すると値段がどんどん下がっていってしまいます。いつのまにか、99円と98円の戦いになっていたりします。

これはいわゆる経済学の「囚人のジレンマ」というやつです。
お互いに値下げ競争すると、双方損をするとわかっていても、今日勝ちたいから相手より値下げしてしまう。というジレンマです。

 

スーパーがあらかじめ最低価格保証をしていたら、どうなるでしょうか?

スーパーがきゅうり5本で150円【最低価格保証】。
と決めてしまえば、たとえ八百屋さんが150円より安くしても、どうせスーパーのほうがそれより安くするのがわかっていますから、八百屋さんはせいぜい151円の価格をつけておくのが妥当ということになります。

翌日も、そのまた翌日もこの価格はかわりません。

 

つまり最低価格保証は、消費者にとってはなんの得にもなりません。スーパーと八百屋さんにとって一番有利な展開になります。

ではどんな場合でも最低価格保証が売る側にとって有利か。というとそういうわけではありません。この条件が成り立つのは、スーパーと八百屋さんが隣通しで、価格がオープンで比較しやすいとき。つまり限られたエリアでのオープンな競争のときに限ります。

エディオンにはこう書かれています。

「当社指定の他社大手家電量販ネットショップ価格に対抗!」

競争相手を限定しています。

エディオン最低価格保証
出典:エディオン

ジェットスターは、各路線で競争相手はごく限られています。新規参入は簡単には登場しない業界です。

それに加えて、価格以外の品質やサービスでも競争は行われています。最低価格保証宣言をすれば、お客さんを総取りできるほど、商売は甘くはありませんよね。