大勝軒の分裂にみる、見えるものと見えないもの
見えるものと見えないもの、どちらを大切に守りますか? どちらにしても大切な守るべきものは守りたいですよね。 ただ人によって、どちらがより守るべきものだと考えるかは異なります。 つけ麺の元祖、大勝軒の弟子たちが内部分裂し…


大勝軒が揺れています。
全国100軒の大勝軒は二つに分裂。

大勝軒のれん会
http://www.taisho-ken.net/
大勝軒味と心を守る会
http://www.taisho-ken.net/

 

しかし、こうなる前から大勝軒のブランドはすでに希薄化していました。各店舗の味がそもそも統一されていないからです。

日高屋のようなフランチャイズ展開するラーメン店、味を守れる人にだけ暖簾分けする博多一風堂。そういった店でさえ、各店舗で味は微妙に異なります。同じ店でも作る人が変われば味は変わります。しかし大勝軒の振れ幅はその枠を超えています。

 

大勝軒にもフォーマットがあります。

「のれん会」にはこのように書かれています。
・多加水卵中太自家製麺
・げんこつ・豚足・鳥ベースにひき肉ミックス、煮干・さばぶし・魚粉を加えたスープ
・秘伝のタレで炊いたチャーシュー
・特性メンマ

一方、「味と心を守る会」にはこのように書かれています。
「各々が切磋琢磨し、互いに「質」を高め合い協力しあいながら、お客様に大勝軒本来の味をご提供し続けていく」

味と心を守る会のほうが、表現が曖昧でかなり心配ですが、のれん会のほうもフォーマットを守ったとしても、味は店によって独自性がかなり出るでしょう。

問題なのは、顧客が大勝軒を語ろうとするとき、それぞれのもつ大勝軒の味の基準が違いすぎると、話が盛り上がらないということです。「大勝軒っておいしいよね」という言葉が、つねに空をきってしまうのです。

これがブランドの希薄化の怖さです。

ブランドを守るには、希薄化を断固許さない中央集権的な組織運営と絶大なる求心力が必要です。

大勝軒が2つに分裂したのは、大勝軒というブランドの終わりのはじまりでしかなさそうです。そのうち、「更科そば」のように、どこにでもある特長のない「のれん」になっていくのが宿命なのかもしれません。