大注目のSTAP細胞。
ついに小保方さんの記者会見が行われました。

最近の2本のブログで、マンホールのフタの材料としてダクタイル鋳鉄を紹介しました。

フェラミカ ル・クルーゼは重い!まるでマンホールの蓋みたい。マンホールの会社が作った軽い鋳物鍋とは

 

マンホール マンホールのフタはなぜ丸い?

 

今回のSTAP細胞問題で起こっている不可思議なことを理解するのに、このダクタイル鋳鉄の発明と商品化の経緯がとても参考になります。

少し長いですが、お付き合いください。

ダクタイル鉄管

■送水トンネル内本管に採用された呼び径1500mmU形ダクタイル鉄管 出典:日本ダクタイル鉄管協会



明治18年、横浜の水道管に初めて鋳鉄管が使われました。昭和に入るとより強度の高い鋳鉄が開発されました。銑鉄に含まれる黒鉛の形状が、より小さく短いことが特徴でした。このことから、理想的には黒鉛の形状が球状のものが、最も強度の高い鋳鉄であることが予想されていました。

それが実現したのは、終戦後、昭和23年のことでした。世界最大のアメリカのニッケル生産会社によって発明されました。これがダクタイル鋳鉄の発明です。

発明のきっかけは、第二次世界大戦によるクロムの不足でした。合金鋳鉄の生産に欠かせないクロムが不足し、代替品の開発が早急に望まれていました。この開発を会社から任されたのが、大学を出て3年目の若い技術者でした。会社の反対を押し切って、危険とされるマグネシウムで実験したところ、案の定、爆発的な反応を起こし、鋳鉄があたりに飛び散ってしまいました。

その破片を顕微鏡で観察したところ、黒鉛が球状になっているのを発見し、ダクタイル鋳鉄の発明につながったというわけです。この発明は基本特許化されました。どんな作り方をしようが、マグネシウムを使って黒鉛が球状化した鋳鉄をつくれば、この特許にひっかかります。

 

日本ではこの特許に注目し、ダクタイル鋳鉄を使った水道管の開発に着手しました。しかし、ここから実際に生産できるまでには、たいへんな試行錯誤と、理論の究明が必要でした。

課題は、たとえば、
  • 原料である銑鉄の不純物の少なさ
  • 球状化を阻害する元素の特定と除去方法
  • 危険なマグネシウムの添加方法
など多岐にわたり、大量生産が実現するまでには、長い道のりが必要でした。それらをひとつひとつ乗り越えて、商品化されたのです。

しかし今だに、黒鉛が球状化する科学的な理論は完全には解明されていません。

 

小保方さんのSTAP細胞の作成と共通点がありますね。

小保方さんの偶発的な手法によるSTAP細胞の発現技術に対して、理研は、基本特許化を急いだのでしょう。そして特許とネイチャーの論文発表のタイミングを、うまく合わせる必要がありました。なぜなら論文発表を先にすれば、公知の事実となって、特許化できないですし、特許の公開が先になれば、論文発表で他の研究者に先を越される可能性があります。

小保方さんのノウハウを、標準化してかつ理論究明するには、どうしても長い時間が必要です。簡単に再現できるものではなさそうです。

STAP細胞の技術開発は、まだスタートしたばかりなのです。科学は後追いなのです。

小保方さんも記者会見でこのように述べています。

「この現象のメカニズムが詳しく理解され、いつか多くの人に役立つ技術にまで発展させていける日を夢見てきました」

 

技術者小保方さんの発明を、国際的に上手にビジネス化するような体制を、国を挙げてサポートすべきでしょう。日本はそうやって、世界に貢献してきたのですから。

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■参考文献:
日本ダクタイル鉄管協会ホームページ
Q&A
鋳鉄管からダクタイル鉄管へ

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