「そんなへんなもの作っても売れないよ」

と言われたら、あなたならどうしますか?

 

オルファカッターの試作マネジメントの第2話です。

印刷工場で働く岡田良男、
紙を断裁するときの、

    • すぐに切れなくなるナイフ
    • 使い捨てが無駄なカミソリ
という課題に対して、

あらかじめ切れ目の入ったカミソリ

というアイデアを思い付きます。

こういったアイデアには、
必ず、相反する2つの条件があり、
その実現を阻むものです。

この場合は、
    • 刃が切れなくなったら、簡単に折りたい
    • 使っている時に折れてはいけない
折れやすく、折れにくい。

この相反する条件に、
    • 刃のサイズ、厚さ
    • 折れ線の角度
    • 溝の深さ
などのパラメーターを
決めていく作業は、
地道な試行錯誤の繰り返しです。

何日も徹夜が続くこともあったそうです。

ようやくこれだ。という試作品ができたのが
1956年です。

オルファ試作品

 

 

 

出典:この一本から世界へ

しかしそれから、本格的に
市販されるまでには、
4年かかっています。

まずは、良男は試作品を、
刃物メーカーに持ち込みました。

しかしどのメーカーも、

「新しいことをやる必要がない」
「やったことがないことをやりたくない」
「売れると思えない」

など、反響はサッパリ。

ここは私の想像ですが、
ここで良男は、反響がないのは、
アイデアや試作品が悪いのではなく、
既存のお客さんしか知らない刃物メーカーが、
新しいものを作る必然性がない。
と考えるからだ、理解したのだと思います。

でなければやめているでしょう。

次に良男は、
「であれば、自分で作って、売るしかない」
と考えました。

直販ですね。

兄弟で岡田商会を設立。
実用新案を出願し、
まずは3000本の製造を、
町のプレス工場に依頼しました。

しかし、納品された品物は、
手作りで、品質、寸法などの
バラツキが多く、使い物に
なる完成度には程遠いもの
でした。

一本一本、良男はペンチとヤスリで
手直しをして、これまた一本、一本、
飛び込みセールスをして、売り歩き
ました。

現場をよく知る良男が考えた製品
なので、印刷関係の現場の受けは
非常によく、
やがて口コミで評判が広がり、
1年かけて3000本を
売り切りました。

さて、このあとも岡田商会は、
市販化するまでに、
様々な苦労を重ねるのですが、
それはまた次回。

世の中にない画期的な商品を
創造する。

そのためにただ、
天才的ひらめきを待つのは、
マネジメントでもなんでも
ありません。

新しい発想の製品の試作をするには、
まず、

1.明確な課題、実現したい目標

を設定することです。

そして、それを実現する具体的
アイデアがあれば、

2.まずはやってみる

ということです。

次に大事なことは、

3.すぐに評価する

ことです。

ここが、最重要ポイントです。
全体の完成度を高めてから、
大がかりな評価を行う。
というやり方になってしまうことが
多いのです。

しかし、新しい発想の製品の場合には、
一度の大きな失敗で、芽を摘むことに
なりかねません。

克服しなければならない山は、
大小さまざまで、限りなく
たくさんあるのです。

一度で超えようなんて思わないことです。

まずは自分で評価する。
それである程度、改善を加えたら、
身近な人に評価してもらう。
次は社内評価。
次はテスト販売。
次はエリアを絞って。

直販であれば、ダイレクトに
評価してもらえますね。

途中で登るべき山を変えても
よいのです。

そうやって、登ったり下ったり
しながら、たどり着いた
山頂までの道のりを、
あとになって、人は、

天才的なひらめき

と呼んでいるだけなのです。