切れなくなったら、ポキン。
折ったばかりのカッターナイフで、
最初の紙を切る快感。
新品の使い心地を、何度でも
味わえるカッターナイフは、
日本発の世界に誇る発明品です。
「折る刃」式カッターのオルファ。
もう有名な話です。
このような発明品の開発物語は、
おおよそ次にようなストーリーです。
ある日、天才的な発明家が、
ふとひらめいて、
それがきっかけで、
すばらしい商品ができました。
そういうストーリーを聞くたびに、
少々残念な気持ちになるのです。
「天才」と「ひらめき」
どちらもマネしようがないですね。
でも本当に、そうなのでしょうか。
オルファカッターの開発で、
それを検証してみましょう。
オルファの創業者、岡田良男の実家は、
紙の断裁業でした。
手先が器用な良男は、職をいくつか
変えたのちに、印刷工場で
働きはじめます。
印刷工場では、毎日職人が
ナイフやカミソリを使って、
紙を断裁していましたが、
ナイフはすぐに切れなくなる。
カミソリは捨ててしまうので無駄。
良男は寝ても覚めても、
もっといい方法はないかと、
考えるようになりました。
当時、靴職人はガラスの破片を使って、
靴底などの修理をしていたそうです。
ガラスの切れ味が悪くなると、
そのガラスを割って、新しい切り口
を使っていました。
それがヒントになり、
カミソリの刃が切れなくなったら、
折ればよいことに気付きました。
また、進駐軍が持ち込んだ板チョコは、
格子状の溝がついているので、
決まったところで折れます。
カミソリの刃に、
あらかじめ切れ目を入れておけば、
決まった場所で、ポキンと折れる
刃物ができる。
これが世界的発明品
オルファカッターの発想の原点です。
このアイデアは、
天才的なひらめき
なのでしょうか。
そのアイデアを商品という形に
具現化し、世の中の多くの人が、
その恩恵を被ったからこそ、
そのアイデアは天才的と、
呼ばれているのです。
事実、このアイデアを基に、
良男は試作をスタートしますが、
とてもスムースと呼べるもの
ではなかったのです。
途中であきらめれば、
そのアイデアは、天才的と
呼ばれることもなかったのです。
良男の試作の奮闘については、
また次回。