NHKの『ニュース7』が、民放の『NEWS ZERO化』しているらしい。
これを指摘した元日テレのディレクターで現法政大教授の分析が、
見事に内輪の論理すぎて、マーケティングの落とし穴に
すっぽりとハマっています。

これは業界の内側にいると、陥りやすい罠。
外へ出ても引きずるくらい強烈な罠なので、
自戒をこめて、どんな落とし穴なのか、分析します。



■要旨

NHKがニュースで「見せる工夫」をし始めた。
「民法の番組を徹底的に研究しろ」という上からの指示が出ているからだ。
NHKも視聴率を意識するように変わった。
「伝えるべきニュースを伝える」ではなく「見てもらえるニュースを伝える」。
という本末転倒が進んでいる。

元日テレのディレクターがNHKを批判する構図は、評論的ではありますが、
おかしくはありません。ただ本末転倒とする主張の根底に、

NHKは「伝えるべきニュースを伝える」。
民法は「見てもらえるニュースを伝える」。

という前提が当然のように語られていることに違和感があります。

おそらく筆者にとって、放送する側から見れば、
業界には官の巨人NHKと民放各局という構図が想定されていて、
民放から見れば、NHKは競争原理から外れた別のルールで経営されている
存在なのでしょう。民放の現場ではその不条理な状況での戦いに、
苦労してきたはずです。

しかし、視聴者から見れば、業界の競争の構図や現場の苦労は、
どうでもよいことです。ただ見たいものを見る。それだけです。
これに気付きにくいのが内輪にいる落とし穴です。
視聴者は、NHKというブランドに民放にない特別な価値を求めて、
NHKのニュースのあり方に対して、意見があるかもしれません。

ニュース

NHKが変わろうとしているのは、視聴者の立場になって
自分たちのあり方を見つめなおす、という意味で正常な進化です。
「伝えるべきニュースを伝える」という発想こそが、
本末転倒=内輪の論理。

ただNHKも視聴者視点に慣れていないのか、
自分たちのターゲットとポジショニングを見誤っているかもしれません。
70代がメインターゲットという特異なポジショニングなのに、
若者に迎合したニュース作りをしてしまっては、
かえって視聴率が悪化することになります。
若者にもっと見て欲しければ、別の枠で思いっきりやるほうが
効果的です。

「民法の番組を徹底的に研究しろ」という指示の意味は、
「民放の番組をマネしろ」という意味ではなく、
「民放の番組づくり=視聴者視点を研究しろ」という意味。
現場が指示を的確に噛み砕くことができるようなマネジメントが
今後の変革の鍵になってくるでしょう。