「うまい、やすい、ごゆっくり

ついに、ついに、
吉野家は「ごゆっくり」になりました。

これは吉野家のキャッチフレーズではなく、
吉野家の「牛すき鍋膳」のコンセプトです。
しかし、「うまい やすい はやい」の
吉野家が、自ら「ごゆっくり」と言い始めたことは、
大胆な自己変革の現れです。

牛すき鍋膳2014
出典:吉野家 牛すき鍋膳

吉野家のキャッチフレーズの移り変わりと今、そしてこれから

で詳しく分析しましたが、再度まとめると、

「うまい 早い」 … 創業時
「早い うまい 安い」 … 1970年代チェーン化
「うまい 早い 安い」 … 1980年代倒産後再起
「うまい やすい はやい」 … 2000年代デフレ
「うまい やすい ごゆっくり」 … 2014年牛すき鍋膳

私がはじめてミスター牛丼 安部修仁前社長
の著書、
「吉野家の経済学」
を読んだ時は、2002年。
BSE問題で吉野家が牛丼を休止するという、
前代未聞の決断をする1年ほど前でした。

 

この本では、吉野家が牛丼単品だからこそ、
オペレーションを極限まで効率化できるという
吉野家のビジネスモデルが語られていました。

つまり、「うまい やすい はやい」は、
牛丼単品モデルだから実現できたのです。
そして、店舗運営の最重要キーワードが、
「はやい」だったのです。
店の大きさ、厨房の設計、牛丼の釜、お玉、
もろもろの什器、社員教育、、、
すべてが「はやい」に基いてデザイン
されていました。

 

その後、吉野家は迷走します。
BSE問題で牛丼を休止したことと、
その間のすき家の拡大で、
メニューの拡充を余儀なくされ、
徐々に「はやい」を失っていきました。

「はやい」を失った吉野家は、
もはやガタガタだったのです。
それでも安部修仁前社長は、
つねに変革の姿勢を崩さず、
いろいろな手を打ちました。
そしてようやく辿り着いたのが、
「牛すき鍋膳」だったのです。

 

今年8月、22年間吉野家の経営をリード
した安部修仁社長が鮮やかに退任しました。

過去の「はやい」を拭い去るように、
「ごゆっくり」と言い切った、
河村泰貴新社長。

吉野家が適応し続ける会社であることの
証明です。

適応するものだけが生き残るのです。