直販のメリットは、
顧客とダイレクトにつながること。

顧客とダイレクトにつながるメリットは、
顧客の声を直接聞けること。

中でもクレームは、
まったなしの顧客の声です。

クレームこそ、宝の山。

とはよくいいますが、
本当にクレームを活かしきれているでしょうか?

一過性の苦情処理に終わっていないでしょうか?

クレームを新商品の開発に活かして、
業界トップにいる会社があります。

産業用ヘルメットメーカー 谷沢製作所。

国内市場シェア35%のニッチトップメーカーです。

現社長の谷澤氏がクレーム係だったころ、
こんなことがありました。

ゼネコンから、
「保護用ヘルメットのバンド調節が
わかりくい。」
とクレームがありました。

ヘルメット

出典:谷沢製作所

設計者は、十分わかりやすい調節機構
にしていました。営業も、
どこがわかりにくいのか理解できません。

「たまたま、ものわかりの悪い人だったのかも」
と見過ごしてしまえば、
それっきりですが、
谷澤氏は、営業と同行して、
詳しく話を聞きに行きました。

話を聞くと、
「ものわかりの悪い人」は、
ゼネコンの社長でした。

現場を訪れた際に、
ヘルメット内部のバンド調節に手間取り、
周囲が冷や汗をかいたということでした。

設計者は、一度セットしたバンドの長さは、
その後は調節することはない。と考えて
いました。

しかし、実際には、初めて調節するときには、
一度セットしてから、具合を確かめて、
再度調節をしながら、長さを合わせていくものです。

このヘルメットは、再調整がとても、
やりにくい構造になっていたのです。

現場の作業者は、初めだけ調整に手間取りますが、
次の日からは、なんの問題もないため、
今までクレームとしてあがって
こなかったのでしょう。

設計者は、多かれ少なかれ、
使用者の立場に、完全になりきれない
ことがあります。

あとから聞けば、
「こんなあたり前のこと」
かもしれませんが、全社員が
気付かない。もっといえば、
業界全体が誰も気づかないことも
あります。

そこに大きなヒントとチャンスがあります。

谷澤氏は、クレームの重要性を
痛感して、社長になってから、
クレームを最大限に商品開発に
活用し続けています。

片手で簡単に調節できるバンド。
下を向いてもずれにくい構造。
ひさしが透明なヘルメット。
蒸れにくいヘルメット。

このような外見上明らかな工夫を、
特許化することで、
他社が簡単にマネできない
商品を開発し続けています。

クレームは最初から宝の山なのではなく、
磨けば宝になるということです。