「戦略」を大げさに考えていませんか?
それがそもそもの間違い。

戦略は、身近で、わかりやすく、実行可能なものです。

たとえば、

「家に帰ったら財布から小銭を全部貯金箱に入れる」

これは立派な戦略です。
学生時代にやったことがあります。
10万円くらいあっという間に貯まります。
私はそれで沖縄旅行に行きました。

貯金箱

「神奈川で2番めに美味しいラーメン屋」

ポジショニング戦略の典型です。
誰にでもマイ・ベストラーメン屋はだいたい決まっています。
かといってそこにしか行かないわけではなく、何件か行ったり来たりしているはずです。星の数ほどあるラーメン屋から、その何件かの中に加えてもらうための戦略的キャッチフレーズです。

戦略とはひとことで言うと、シナリオのこと。

こーしてあーすればどーなってこーなるだろう

くらいの感じです。まずはかる~く考えましょう。

偉い先生は戦略をどのように定義しているでしょうか?
本屋さんに行けば、戦略に関する本が山ほど並んでいます。
何十冊も読みましたが、読めば読むほど頭がボーっ。
数ある戦略の定義の中で、究極の定義はこれです。

「市場の中の組織としての活動の長期的な基本設計図」
「企業や事業の将来のあるべき姿とそこにいたるまでの変革のシナリオを描いた設計図」

伊丹敬之『経営戦略の論理』より

経営戦略論で私が最も信頼する伊丹敬之先生の定義です。
過不足なく戦略のエッセンスを表現しています。

「家に帰ったら財布から小銭を全部貯金箱に入れる」

という戦略。

チリも積もれば山となる。といいますが、なかなか実行できないもの。それを潔いルールをつくって、習慣化してしまうためのシナリオです。でも表現にちょっと足りない部分がありますね。「将来のあるべき姿」が書かれていません。

「沖縄旅行に行くために、家に帰ったら財布から小銭を全部貯金箱に入れる」

前半が将来のあるべき姿、後半が変革のシナリオ、全体で設計図

ということになります。学生時代の私はなんとなくこの方法を試してみて、予想以上に貯まったから沖縄旅行に使ったのでした。そういう意味では本当の戦略思考だったわけではないということです。

「神奈川で2番めに美味しいラーメン屋」

これも「将来のあるべき姿」が抜けています。
また「設計図」にもなっていません。

なぜでしょう?

「お客さんを増やすために、『神奈川で2番めに美味しいラーメン屋』と看板に書く」

これで戦略っぽくなってきました。
でもお客さんからすれば、これを知ってしまうと若干しらけます。
この戦略は、ラーメン屋の店主が心に秘める決め事です。ましてそのシナリオを公開すれば、お客さんからソッポを向かれてしまう可能性大です。

戦略は表に出ないものです。

だから私達は、戦略に触れる機会が少なく、戦略思考を学ぶチャンスがあまりありません。

次回は、戦略に必要なことをひとつひとつ考えていきましょう。