ラグビーワールドカップ2015。日本はグループリーグで3勝しながらも、惜しくも決勝トーナメントに進出できませんでした。もともとワールドカップで1勝しかしたことのなかった日本が、3勝もしたのですから、これは快挙です。

これまで一次リーグで3勝して決勝に進めなかった前例はないそうです。あとひと踏ん張りできたとすればどうすればよかったのか。この事例ととおして、戦略思考で考えてみます。

ラグビーワールドカップロゴ

結論からいうと、日本がスコットランドに負けたあとで、エディー・ジョーンズヘッドコーチが「勝てると思った」と語りました。ここに戦略ミスがありました。あくまで結果論なのでラグビーをよく知らない私がいうのもおこがましいですが、戦略思考で今後に活かす教訓があるとすればここです。

 

ワールドカップラグビー2015における日本の目標は、最初から決勝トーナメント進出と明確に決まっていました。これはエディー・ジョーンズヘッドコーチが明言しています。そこにブレはありませんでしたが、これまで1勝しかしたことにない日本チームにとっては、非常に高い目標です。選手たちがその高い目標の実現可能性をどのように捉えていたのかはわかりません。しかし南アフリカに勝ったことで、目標が夢ではなく、一気に現実に近づいたと感じたのではないでしょうか。

 

決勝トーナメント進出のルールは複雑だと言われています。勝敗だけでは決まらず、プール(グループ)内で勝点の多い2チームが決勝に進出します。勝点の基本算出方法は、

勝ち=4点、引き分け=2点、負け=0点

と単純ですが、それに加えて、

・4トライ以上すると1点加算
・負けても7点差以内なら1点加算

というルールがあります。これが複雑さの要因ですが、今回のワールドカップの結果を見る限り、この方法は理にかなっていると私は思います。

 


表 ラグビーワールドカップ2015最終結果 
プール 勝点 得失
C ニュージーランド 19 4 0 0 125
D アイルランド   18 4 0 0 99
A 豪 州    17 4 0 0 106
B 南アフリカ   16 3 0 1 120
C アルゼンチン   15 3 0 1 109
D フランス     14 3 0 1 57
B スコットランド 14 3 0 1 43
A ウェールズ  13 3 0 1 49
B 日 本     12 3 0 1 -2
A イングランド 11 2 0 2 58
D イタリア     10 2 0 2 -14
C ジョージア    8 2 0 2 -70
B サモア     6 1 0 3 -55
C トンガ      6 1 0 3 -60
A フィジー   5 1 0 3 -17
D ルーマニア    4 1 0 3 -69
D カナダ      2 0 0 4 -73
C ナミビア     1 0 0 4 -104
B アメリカ    0 0 0 4 -106
A ウルグアイ  0 0 0 4 -196
この表を見るたびにくやしさが募りますが、冷静にみると全一次リーグの勝点上位8チームが決勝トーナメントにきれいに進んでいることがわかります。つまりこの方法は、プールごとの有利不利を排除できる可能性がある方法ということです。あくまでこの結果だけからしかいえませんが。

すなわち、決勝進出という目標のためには、

勝敗よりも、勝点を取りに行く

という戦術に絞り込む必要がありました。

 

最初の試合、南アフリカに奇跡の勝利をしたことで、日本チームは南アフリカよりも実力で劣るスコットランドに「勝てる」と思ってしまいました。もちろんヘッドコーチや選手の頭の中に、勝点重視の戦術思考は統一されていたはずだということはいうまでもありません。でも心の片隅で「勝てるかも」と思うのは、ごく当たり前の心境です。そのほんの少しの戦術の迷いが、ひとつひとつのプレーを変えていきます。

エディー・ジョーンズヘッドコーチがスコットランド試合前に選手に念を押す必要があったことは、「勝て」ではなく、

1.4トライを狙え
2.勝て
3.劣勢でも7点差以内に抑えろ

この優先順位でした。

 

戦略思考で最も大事なことは、明確なゴール、目標設定です。
決勝トーナメントに進む。という目標設定は100点満点でした。
次に考えるのは、ルールを変えられないか?ということです。
日本チームは、反則していないことを審判に積極的にアピールすることで、サモア戦では相手の反則を誘いました。ルールを自分たちに有利なように変化させたのです。
そして次は、変えられないルールなら、とことんそのルールを研究して、ルールの範囲内でいかに相手を出し抜くかです。そのルールとはこの場合、決勝トーナメントに進むためのルールです。

結果を見てみると、日本の9番目のポジションは妥当です。3勝したチームの中では最下位だったということです。

日本がもともといたポジションは、0勝のカナダ、ナミビア、アメリカ、ウルグアイのところです。その日本が4位の南アフリカに勝ったのですから、ヘッドコーチも選手も国民も舞い上がるのは当然です。

 

戦略思考は、そういうときでも冷静に目標を達成するための戦術を考えるのに最適です。