ポッキーが誕生したのが1966年。
その頃、チョコレート菓子は、
板チョコ全盛期でした。

板チョコで不発だったグリコは、
他社と違う形の
チョコレート菓子のヒット商品を
模索していました。

 

1963年発売のスティック型スナック、
プリッツが順調に売上を伸ばす中、
プリッツにチョコレートコーディング
というアイデアが自然に出てきました。

当時、ビスケットにチョココーティングした
お菓子といえば、

フィンガーチョコ(森永、1955年発売)

また、板チョコではなく、細長いチョコといえば、

ペンシルチョコ(不二家、1960年発売)

どちらも共通点といえば、銀紙。
銀紙をピーっと剥がして、
少し残した銀紙を持って、食べる。

 

グリコの商品開発者たちも、
当初この発想から抜けられなかったようです。

どうやって銀紙で1個1個包むか
どうやってコストを下げるか

そんな議論が続きました。

 

おもしろいですよね。
今となってはごく当たり前の、
一部分だけ残してコーティングするという
簡単な方法が、前例がないと、
誰も思いつかないという事実。

しかし神はグリコを見捨てなかったのです。
何度も包み方を試すなかで、ある日、
ひとりの開発担当者が、

「全体にチョコをかけなくてもよいのでは?」

と思いついたのです。

 

開発担当者全員が、

銀紙のコストを安くする方法

ばかりで頭が一杯だった中で、
その開発担当者の頭の片隅に、

なぜ銀紙で包むのか

という根本的な問いかけがあったのだと、
私は想像します。

その問いかけを突き詰めると、

食べるときに手が汚れない
手軽に口に運べる

という2点にたどり着きます。

ポッキー食べる
これがベネフィットです。
このベネフィットを実現する一つの方法が、
銀紙であって、他にもあるかもしれない。
といったん銀紙を忘れる発想。
ベネフィットファーストの発想が
ポッキーを生み出したのではないでしょうか。

 

商品開発は、前提条件との戦いともいえます。
銀紙、銀紙と悩んでいてはポッキーは生まれません。
ベネフィットファーストで、
一度前提条件をリセットして考えてみると、
新しい展開が拓けるはずです。