Stop and Hear the Music (動画)
Joshua Bell

この動画は見てもつまらないです。

なぜなら、一人のバイオリニストが、
ワシントンDCの地下鉄の駅で、
ストリートパフォーマンスしているのですが、
ただただみんな足早に通り過ぎていくだけの、
映像なのです。

これは、ワシントンポストが仕掛けた実験です。

ストリートミュージシャンの演奏が、
もしとんでもなく美しかったら、
人々は立ち止まるか?

起用されたのは、グラミー賞も受賞した
世界的バイオリニスト、ジョシュア・ベル氏。

彼は前日に、一人$100のコンサートで、
喝采を浴びました。
そのコンサートで使った、3億5千万円の
バイオリンを持ち、翌朝、
地下鉄の通路に一人立ちました。

Joshua_Bell

出典:ジョシュア・ベル(Wikipedia)

 

○ジョン=デイヴィッド・モーテンセン氏

まるでクラシックを知らない政府エネルギー部門課長
立ち止まり3分ほど聴いて、生まれてはじめて
ストリートミュージシャンにお金を恵みました。
「なんか知らないが、平安な気持ちになった」

○ジョン・ピカレッロ氏

遠くから9分間、じっと聴きほれる。
「こんなふうに一日を始められるなんて素晴らしい」

○オル氏

子供の頃バイオリンを弾いていた会計課職員
曲の題名はわからなかったが、
才能ある演奏家だと思った

○ステイシー・フルカワ女史

音楽のことはよく判らない政府商業局統計課職員。
3週間前の無料コンサートでベル氏の演奏を
聞いており、唯一彼と見破ってびっくり仰天。

 

さて、ジョシュア・ベル氏は満足だったでしょうか?

現実には、千人以上の人が、立ち止まりもせず、
彼を無視し、通り過ぎて行ったのです。

ワシントンポストは、

「芸術には鑑賞するのに相応しい環境が必要だ。
ストリートミュージシャンでは難しいのでは?」

と結論づけています。

 

私はこのように考えました。
1000人のうち、4人の心を響かせたのは、
さすが!

でも、ビジネスにはならない。
まず、ジョシュア氏が演奏する場ではなかった。
次にジョシュア氏には、ストリートパフォーマンスのスキルがない。
人がわんさか集まっている
ストリートパフォーマンスを
よく観察していると、
そこには綿密に計算された
集客と集金のプロセスがあることに気づきます。

発する言葉ひとつひとつに意図があります。

まずどうやって通りすがりの人の
足を止めさせるか。
次にその人が立ち去らないようにする方法。
徐々にパフォーマーと観客の一体感を演出。
そして、最後に完璧なクロージングで、
帽子に望みの金額のコインを入れさせる。

素人が、いきなりここまでできるわけがないのです。
ところが、ビジネスや商売になると、
ジョシュア氏と同じことを
平気でやってしまうことが多いのです。

技術は一流。
創造力も一流。
モノを作るプロ。

そんな一流のプロが、
ほら、どうだ!
とホームページで直販をスタートしても、
そう簡単に、人気商品に
なれるわけではありません。

自分にふさわしい場を見つける。
モノを売るスキルを身に付ける。

そんなことを地道に進めて
いかないと、
3億5千万のバイオリンは、
宝の持ち腐れになるのです。