東京2020エンブレムにベルギーの劇場からクレームがつきました。確かに似てます。このエンブレムが発表当初から反応が微妙だったのは、どうしても東京1964シンボルマークと比較される宿命にあるからでしょう。

亀倉雄策(ゆうさく)氏がデザインした1964年東京オリンピックのシンボルマーク。

東京1964シンボルマーク

文句なしにカッコいい!!

亀倉雄策氏はのちにこう語っています。

「僕の功績はシンボルマークをデザインしたことではない。
作ろうと提案したことだ。」

東京2020エンブレムをデザインした佐野研二郎氏が、「いつかこんなシンプルで骨太な仕事がしたい」と強く意識してきたデザインです。

元を正せば、日本の国旗、日の丸、正確には日章旗が、究極的にカッコいいのです。私はこの国旗の非の打ち所のない美しさを誇りに思います。世界中のどんな国旗と並べても、その潔さはピカイチです。

亀倉雄策氏は、日の丸の美しさ、潔さを1964東京オリンピックのシンボルマークで十分に引き出すことに成功しました。というよりそのまんま。ちょっとズルい気もします。

ベルギーの劇場のクレームが不当かどうかの議論とは別に、「オリンピック招致エンブレムはよかったのに」という声もあります。

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では、これはどうでしょうか?

本日(8月1日)からエントリーが開始された東京マラソン2016のシンボルマーク。

東京マラソンロゴ
出典:東京マラソン

どちらも亀倉デザインの発展形であることがはっきりわかります。
日の丸を単なる構成要素としてではなく、アイデンティティとして使っています。

東京2020エンブレム
出典:東京2020

佐野研二郎氏が目指した「シンプルで骨太」なデザインを、今回発表された東京2020エンブレムから感じられないのは、日の丸がアイデンティティとしてではなく、構成要素として、小さな赤い丸と金と銀のパーツで表現された大きな丸に分散されて使われているからだと、私は思います。

最終的なデザインが潔ければ、少々構成要素が似ていようがなんだろうが「そんなの関係ねー」と多くの人が思ったでしょう。そういう観点で、今回のクレーム騒動は、「完璧に類似デザインを調査すべき」とか、「商標や著作権に触れていないから問題ない」とか一般化できる問題ではなく、このエンブレムのデザインそのものの個別的な問題なのだと、私は考えています。