ブリジストンの電動アシスト自転車が、テレビCMに力を入れています。

DUAL DRIVEシリーズ
「電動アシストを、感動アシストへ。」


dualdrivelogo昨年発売した両輪駆動のアルベルトeを、横展開してきました。両輪駆動の技術をDUAL DRIVEというネーミングにまとめたのは秀逸です。

コマーシャルでは、DUAL DRIVEの特長を訴えて、体験を促すようなアプローチをしています。

コマーシャルで訴えているメッセージを順に並べると、

1.軽々登れる
2.後輪ベルトドライブx前輪モーター
3.軽々止まる
4.細道
5.濡れた路面

1.軽々登れる、は電動アシスト自転車そのもののベネフィットをまずアピールしています。

2.後輪ベルトドライブx前輪モーター、これでDUAL DRIVEの技術解説をしています。


3.軽々止まる、これはDUAL DRIVEならではの「ブレーキアシストシステム」機能をアピールしています。

4.細道、これは両輪駆動による安定性をアピールしています。

5.濡れた路面、これはDUAL DRIVEならではの「スリップ制御システム」機能をアピールしています。

盛りだくさんですが、コマーシャルを見てベネフィットを感じることができるのは、実は1.軽々登れる、のみです。DUAL DRIVEだから、なぜ軽々止まれたり、濡れた路面に強いのかは、このコマーシャルだけではまったく理解できません。たくさんの機能をアピールしようとしているので、そこまで表現しきれなくなっています。主な目的が体験への誘いなので、とにかくいろいろ優位性があるよ。と訴えて、「感動アシスト」というフワっとした言葉に集約させています。

とにかく体験すれば感動できる。

ということが言いたいわけです。
これはかなりもったいない15秒の使い方だと思います。

せっかく技術を「DUAL DRIVE」というわかりやすいフレーズで言い表したのに、肝心のベネフィットの根拠としての「DUAL DRIVE」技術を表現できていません。そこにきっと感動があるはずだ、と思わせる説得力がこのコマーシャルにはないのです。

日本における電動アシスト自転車の両雄、ヤマハとパナソニックは、駆動方式としてセンタードライブ方式を採用しています。ペダル近くのチェーンをモーターで回転させて後輪を駆動しています。それに対してブリジストンは、ハブモータ-で前輪を直接駆動します。それによってヤマハとパナソニックにはできない芸当で差別化する戦略です。DUAL DRIVEはまさにそのキモとなる技術です。しかし、両輪駆動であることで決定的に差別化できるベネフィット=キラーベネフィットがありません。それで仕方なく、軽々止まる、細道、濡れた路面の3つのベネフィットを並べるしかなくなってしまいました。どれも、現在自転車に乗っている人が、とりわけ困っていることではありません。

コマーシャルは15秒しかありません。その短い時間であれもこれもを薄くアピールしても、頭になにも残りません。ひとつのキラーベネフィットを根拠つきでアピールして、「ああ、なるほどね」と納得させてはじめて、視聴者を次の行動に移すことが可能になります。

ベルトドライブにその突破口があるのでは。
以前書いた両輪駆動のアルベルトeの試乗レポートにそのヒントがあります。

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