熊倉硝子工芸の江戸切子は、
直販でしか買えません。

直営店に直接足を運ぶか、
インターネットで購入するしかないのです。

大手の百貨店に行っても買えないのです。

 

直販のみに徹する、江戸切子の熊倉硝子工芸、飛躍の瞬間【第6回】

で紹介したように、

元々は下請けでした。

自分たちの作ったモノが、
親会社のブランド名で販売される。

親会社にはすでにできあがった流通網が
あります。信用もあります。

ですから、当面の売上を上げるには、
下請けという選択は、
間違ってはいないのです。

 

熊倉硝子工芸は、
ずっと手磨きで江戸切子をつくってきました。

他の工房が、機械磨きでコストダウンをする中、
親会社が、他社との価格競争に陥り、
熊倉硝子工芸に、
コストダウンを迫る。
という構図は、容易に予想できます。

親会社のコストダウン要請も、
当面の競争力を保つためには、
間違ってはいません。

 

しかし、手磨きは、
熊倉硝子工芸にとっては、

だったのです。

魂を売るか、当面の売上をとるか。
どちらが正解とはいえません。

熊倉硝子工芸は、魂を売らなかった
ということです。

江戸切子 出典:熊倉硝子工芸

 

手磨きにこだわる。

それだけで、事業が継続できるわけでは
ありません。

いままでの販路をすべて失い、
いちから構築するのですから、
並大抵なことではありません。

 

熊倉硝子工芸が直販のみに転換してから
やり続けたことは、

売れる商品を作る。
そのために、顧客の生活スタイルを
徹底的に考える。
どんな人が、どんな場面で使うために、
どんなタイミングで購入するのか。

直販だからこそ、
顧客からのフィードバックから
見える顧客の生活スタイル。

 

これが、熊倉硝子工芸の
魂の磨き方、魂のこめ方、
なのです。

 

現在、手磨きで江戸切子をつくる
工房は、熊倉硝子工芸だけになりました。