科学の蓄積と技術の蓄積は、本質的に異なります。

科学は論理の積み重ねによる、鉄壁の知の体系。
技術はある目的を達成する手段。

そして技術は、必ずしも科学を必要としません。

参考:技術は理論がなくても成立する!?うまいものはうまい。

 

もちろん知らず知らずのうちに科学を利用している
ことはあります。
しかし科学が必須ではないのです。
手段の組み合わせだけでも技術は発展します。

 

インドの陶工職人が発明した
電気のいらない冷蔵庫
は、まさにそんななかから生まれたひらめきでした。

参考:インド人発明家が生み出した「電気を使わない冷蔵庫」の精神

粘土でできた箱の上部に水を入れ、
側面に浸み込んだ水の気化熱を利用して、
箱の中を冷やす。

条件によるが外気より5~6度冷えるという。

 

もともとインドの村では、陶器の壺に汲んだ水を入れて、
冷やしておく習慣があるそうです。

これは古くからの経験が、習慣になっていたことで、
科学的研究から生まれた成果ではないですね。

この壺からヒントを得た陶工職人が、
数カ月の試行錯誤を経て制作した
ミティクールという名の冷蔵庫は、
たちまち人気商品になりました。

 

インドでは5億人以上が電気のない生活だそうです。

この商品がどんなインパクトをもたらしたか、
容易に想像ができます。

 

試行錯誤には、もちろん科学の知見や、
科学的検証方法が活用されたでしょう。
しかし、この商品は、科学の蓄積から
生まれたのではありません。

電気がない。という悪条件と、
冷やしたい。という願望と、
陶器の壺で水を冷やす。という経験と、
陶工職人の技術の蓄積。

これらが重なって生み出されたもの。
そのどれか一つが欠けても、
生まれなかったものです。

技術の蓄積によって、画期的な商品を産みだすには、

悪条件と願望と経験

が必要なのです。

 

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