かつお節を削る。
墨を磨る(する)。

どちらも家庭では絶滅寸前です。

小学校のころ、一時期書道を習っていました。
字を書くのは一向に上達しませんでしたが、
墨を磨るのは好きでした。

墨の独特の甘いニオイを感じながら、
ゆっくり墨を磨る時間。

墨に使われる動物由来の膠(にかわ)のニオイを消すために、
香料が使われているようです。

書道

今では学校の授業でも、書道教室でも墨汁を使うことが多いようです。
墨汁を発明したのは、開明。
明治中期に発明された開明墨汁は、今も現役です。
書道だけでなく、漫画、イラスト業界で有名です。

一方現在の墨汁のトップシェアは、呉竹の墨滴。
開明に比べると、新参ですが、製品開発力があります。
代表的なものが、「くれ竹筆ぺん」。
太い字も細い字も書けるペン先の開発には2年かかりました。
しかし呉竹を支える最も重要な技術は、
墨のカーボン微粒子を長期間安定して液中に分散させる技術です。

墨汁や筆ペンで培ったこの技術の蓄積によって、呉竹は、
液体融雪剤や導電性インク、コンデンサーの材料などの分野に
進出しています。

墨汁も筆ペンも売上は落ちる一方ですが、
技術があり、製品開発力を失わなければ、
新しい分野を開拓し続けることができます。