スーパーに行きます。
レジのあと肉や魚は透明なビニール袋に入れます。そして他にもろもろ買ったものと一緒に白いレジ袋に入れて持って帰ります。いつもの光景です。

レジ袋

白いレジ袋は、ポリエチレンの袋です。透明な袋はビニール袋と呼ぶことがありますが、これ、正確ではありません。実はこれもポリエチレン製なんです。ビニールとポリエチレンは化学的に似て非なるものなんですね。

 

ポリエチレン生成方法の発見は、第2次世界大戦後の化学工業で最も利益を生み出した発見と言われています。世の中にこれだけレジ袋が使われていることからもうなずけますね。その生成方法を発見したZieglerは、1963年にノーベル化学賞を受賞しました。

簡単な構造の分子化合物を結合させて、分子量の大きな別の化合物を生成することを重合と呼びます。ポリエチレンはエチレンの重合から生成されますが、300度、数千気圧という厳しい条件が必要でした。1950年代、ドイツの研究所でZieglerはもっと簡単な条件で重合できないか、試行錯誤を繰り返していました。

 

あるとき、思いがけずポリエチレンが大量にできました。Zieglerはその実験条件を記録し、再現実験を繰り返しましたが、何度やっても再現できません。様々な実験条件の違いを検討するうちに思い当たったこと。それは、他のグループと共用していた高圧釜。生成が成功したときだけが、別のグループが使ったあとだったのです。調査すると、実験で使ったあと、きれいに洗浄されていなかったことを突き止めました。高圧釜にニッケル塩が少量残っていたのです。

この事実をきっかけに、Zieglerはある種の金属塩を触媒にすると常温、常圧で効率よくポリエチレンを重合できることを突き止めました。この生成方法がポリエチレンの工業化の発展につながりました。

 

このような例があるだけに、STAP細胞工業化による莫大な利益ノーベル賞のどちらも期待されるのでしょう。現実は、Zieglerが何度やっても再現できない状況から、ニッケル塩が触媒になったことに気づいた時と同じ段階にいるだけかもしれません。Zieglerはそれから様々な金属塩を組み合わせて実験を重ね、ことごとく失敗しています。その中から最も効率のよい触媒としてチタンやジルコニウムを使うことを選び出したのです。

 

まだまだ技術開発はこれからが勝負です。