ヒット商品のブレイク、
そこには飛躍の瞬間があります。
その瞬間、何があったのか?
そこから何を学び、
どのように直販売上げアップに
活かすのか?

シリーズ飛躍の瞬間
今回は爽健美茶を取り上げます。

 

日本のブレンド茶市場で圧倒的な
7割以上のシェアを持つ、爽健美茶。

2013年のリニューアルは、盤石の態勢で
行われ、揺るぎない地位を保っています。

日本コカコーラ、爽健美茶の国民投票を実施した本当の理由

2位のアサヒ飲料「十六茶」は、
ブレンド茶市場の開拓者ですが、
シェアは2割強と爽健美茶と大差があります。

 

爽健美茶が生まれた1993年当時、
日本コカコーラが意識していたのは、
十六茶ではなく、サントリーの烏龍茶でした。
1981年に発売されたサントリーの
缶入り烏龍茶は、消費者に十分認知されており、
当時ウーロンハイがすでに浸透していました。

お茶市場でこれといったブランドが
構築できずにいた日本コカコーラは、
この烏龍茶市場を狙っていました。

コカコーラのブランド力と、
コカコーラボトラーの販売力を
もってすれば、烏龍茶市場で、
トップに立てる。
経営幹部たちはそう信じていました。

しかし多くの広告宣伝費を投下した
「茶流彩彩・烏龍茶」の売上は、
サントリーの烏龍茶の売上に
はるかに及ばなかったのです。

 

そんな状況の中、
福岡で試験的に自販機に投入していた、
まったく宣伝をしていない、
茶流彩彩・爽健美茶
の売上が3週連続、
茶流彩彩・烏龍茶
に並ぶという現象が起こりました。

そのデータにピンときた、当時の
魚谷副社長(後に社長、現資生堂社長)
は、若い社員男女二人に3日間福岡出張を
命じました。

指示は、
自販機の横に立って、爽健美茶の
購入者に2つの質問をせよ。
1.なぜ買うのか?
2.購入頻度は?

自販機

帰ってきた出張者が
目をキラキラ輝かせて、
嬉しそうに報告する表情を見て、
魚谷副社長は、
烏龍茶ではなく、爽健美茶で
勝負することを決めました。

 

爽健美茶の飛躍の瞬間は、
この瞬間です。

 

魚谷副社長は、その3日間の現場調査
以外に、市場調査を行いませんでした。
若い社員の表情で、大きな決断をし、
当時烏龍茶を推していた経営幹部たちを
説得しました。

出張者の報告は、
1.キレイになれそうだから買う
2.毎日買う、コレ以外買わない人がいる
3.購入者は女性

爽健美茶の「美」という文字は、
商標の問題で苦肉の策として
最後に入れた文字です。
この「美」という文字が、
まったく宣伝していないにも
かかわらず、女性の心を
撃ちぬいたのです。

 

心を撃ちぬく瞬間をとらえる
ことができるのは、現場しか
ありません。
何万人にネットでアンケートしても、
抽出できないのです。
そして、顧客と接触した現場の
担当者こそが、顧客と共鳴し、
その共鳴を発信できる唯一の存在です。

 

課長に報告して、部長、取締役と、
データが上がってくるころには、
ただの無味乾燥な数字になっています。
だからこそ、心配な経営者は、
お金をかけて、大量のデータを集めて、
担保をとろうとします。

しかし、爽健美茶の飛躍に
必要だったデータは、たった3日間分と、
二人の出張者の表情だけだったのです。