上野の脇道をだた通り抜けるつもりでした。

 

ふっと横目に入った淡いピンクの和のすだれ。
思わず足を止めると、
風が吹いて、
ピンクのすだれが圧倒的な何かを、
私に語りかけてきました。

 

さくら色の貝?
大量の貝をつないだすだれ?

 

しばらく眺めていると、
すだれの奥から、竜宮城のお姫様が現れました。

三木みどりさん作品

ここは上野の東京芸術大学、美術学部側の小さな門を
入ったところ。

「SENSE of Wonder-ありふれたマテリアルのもうひとつの様相」

という展示会の、屋外展示なのでした。

ピンクの浴衣で登場した、このお姫様は、この展示の作者。

よくよく見ると、ひとつひとつがなんと、

ポップコーン!!

なのです。

触ってみると、ポップコーンのカリふわっとした軽さを
感じます。

 

「これ、全部ポップコーンですよね?」
「はい、そうです。でも全部偽物ですけどね。へへへ」

 

一瞬頭がからっぽに、、、

 

ひとつひとつが、紙粘土でできた手作りのポップコーン。
トウモロコシがはじけてできる茶色い硬い皮までリアルに
再現されています。
何万個あるか、もはやわからなくなってしまうほどの数の
ポップコーンを、すべてたったひとりで手作り。
3年半かけてコツコツつくったピンクのポップコーンを、
テグスに通してつくったすだれなのです。

 

「どうしてこんなことを始めたんですか?」
「最初はピンクのポップコーンのお風呂に入りたくて、
たくさんつくったんです」

「なんでピンク?」
「かわいいから」

 

いろいろ質問すればするほど、
笑えてきました。

この大量のピンクのポップコーンを3年半かけて
独りでつくる驚異。

でも作品の陰から登場した本人は、
アーティストというと想像してしまう、
近寄りがたい雰囲気とは、180度真逆。
実に親しみのある、どんなありきたりな質問にも、
くったくなく答えてくれる、
ピンクの浴衣美人なのです。

そのギャップになぜか笑いがこみあげてくるのです。

三木みどりさん

通りすがる人、みんなが、

近寄って、「ポップコーン!?」

とわかっては驚き、

「これ全部、ひとつひとつ作った」

と本人から聞いて、大爆笑。

みんなが、なんだかわからないけど、
なにか楽しい雰囲気になっていくのです。

 

 

東京芸大修士2年の三木みどりさんの表現には、
どうやらもれなく本人がついてくるらしい。

そして、三木さんの驚異の美に触れると同時に、
三木さん本人とも触れ合うことで、
予期せぬ新しい空間を創造すること。

それが三木みどりさんの表現なのです。

 

芸術と直販の世界を、一緒にしてしまっては、
失礼ながら、

顧客と直接触れ合うことこそ、モノづくりの魂

と日頃から啓蒙している身としては、
同志に出会ったような、
そんな心躍るひとときでした。

 

「SENSE of Wonder-ありふれたマテリアルのもうひとつの様相」
は、12月18日までの開催。

三木みどりさんの作品に触れたければ、
上野に急げ!!

魂は実物見ないと感じないぞ!