スーパーのトマト売り場、ここ数年盛り上がっているような気がしませんか?たくさん種類がある中で、「糖度8度以上の甘いトマト」なんてコピーを見かけます。桃と同じ糖度13度のミニトマトまであるようです。どんな味がするのか、食べてみたいですね。

プチトマト

糖度は、「糖度計」またの名を「屈折計」で測ります。糖度が違うと光の屈折率が変わることを利用しています。この屈折計で国内シェア80%、世界シェア30%のグローバルニッチトップの中小企業があります。

東京都港区のアタゴです。

2003年に発売した世界最小のポケット糖度計PAL-1が、いまだに売れ筋です。2万円程度で手に入ります。八百屋さんも使っています。

 

1940年の創業以来、3度の飛躍のきっかけがありました。このきっかけの中身と時期が、1946年に設立されたソニーと共通点があります。

アタゴは1953年に、それまでデスクトップだった屈折計を、持ち運びできるように小型化して、国内シェアを一気に伸ばしました。1976年には、世界初のデジタル表示屈折計を開発して世界市場も拡大しました。3度めが、2003年の世界最小防水糖度計PAL-1の発売です。

一方ソニーは1955年、ポータブルトランジスタラジオTR-55発売。音を持ち運ぶ文化の先駆けでした。1982年には、世界初CDプレーヤーCDP-101発売。音のデジタル化で音楽業界に革命をおこしました。そして、2001年、運命の分かれ道にさしかかりました。

 

この年、アップルが初代iPodを発売。ソニーは前年に64MB内蔵フラッシュメモリーのネットワークウォークマンNW-E3を発売していました。ネットワークで音楽をダウンロード、メモリーに記録して持ち運ぶ、世界最先端のコンセプトをソニーが具現化しました。一方のアップルiPodは5GBハードディスク内蔵。大きく重く高額で、初期はバッテリーに不具合があり、米国で集団訴訟騒ぎにまで発展しました。ソニーからすれば、ポータブル機器製造の素人のように見えたかもしれません。

しかしその後、iTunesの1000曲もの音楽を、丸ごと簡単に持ち運べるiPodは、世界的に販売を伸ばし、iPhoneとなって今に至っています。

 

屈折計のアタゴにとって2002年は、競合が小型のデジタル屈折計を開発し、世界市場に大きなインパクトを与えた年でした。会社存亡の危機を感じたアタゴは、全社員一丸となって妥協なき新製品の開発に取り組み、7ヶ月で現在の主力PAL-1を開発しました。ポケットに入る防水の糖度計は、世界中150カ国から引き合いが続いています。アタゴにとっては、競合が画期的な商品を出して、社内ががっくりしたときが飛躍の瞬間です。

 

グローバル大企業と、グローバルニッチ中小企業を同列に比較することはできませんが、ソニーには油断があったのかもしれません。また危機感はあっても全社一丸になれないほどの規模と製品カテゴリーの多さが、今だに変革の足かせになっています。ソニーも元は町工場。巨大な中小企業という発想で、社長の独断専行で突っ走ることができたら、一時期は株主が離れるかもしれませんが、必ず復活すると信じています。