コトラーのマーケティングと直販

では、コトラーが「私の履歴書」に書いた
マーケティングの定義を紹介しました。

 

マーケティングは生産者から卸売会社を経て小売業に
至るまでに価格が実際にどのように決定され、
企業の広告や販売促進などで需要曲線が
どのようにシフトするか分析する応用経済学の
一つなのだ。

 

生産者が直接顧客に販売する「直販」において、
価格は、たいへん重要な要素のひとつです。

おそらくほとんどの生産者は、
すでに卸売や小売という販売代理店を介して、
最終顧客に販売しています。

それと同時に直販サイトを持っていたり、
これから直販を始めたい。という段階である
ことが多いのです。

つまり、直販では、
代理店との共存
は、避けては通れないテーマです。

トマト

 

直販価格と代理店の販売価格について、
少し整理しておきましょう。

 

ある会社が、
商品Aを100円のコストで生産して、
代理店に200円で卸しているとします。
代理店は最終顧客Pに、400円で販売します。

 

■代理店販売

商品A:自社 ⇒ 代理店 ⇒ 顧客P

コスト100円   仕入200円  価格400円
粗利100円    粗利200円

また、その会社は、
商品Aを直販でも販売しており、
同じく400円で販売しているとします。

■直販

商品A:自社 ⇒ 顧客P

コスト100円   価格400円
粗利300円

 

ここで、その会社が、
直販サイト上、
年末キャンペーンで直販価格を300円で
特別セールするとします。

それでも、代理店経由に比べれば、
十分粗利がとれます。

 

そうすると何が起こるか?

 

すぐさま代理店からクレームがきます。

代理店から買おうとした代理店のお得意様が、
ネットで調べたら、
直販サイトでもっと安く買えることに気付き、
代理店に問い合わせる。

「うちはおたくからいつも買ってるけど、
直販の価格で買わせてもらえないか?」

代理店はお得意様の要望を無視できず、
泣く泣く、300円で販売。

代理店から、

「なんてことしてくれるんだ。
うちも粗利を確保したいから、
定価を300円とみなして、
仕入れ価格(卸価格)を、150円にさせてもらう」

となって、
生産のコストはあいかわらず100円だから、
自社の粗利は100円⇒50円に半減。

直販より代理店経由の販売額が一桁多い
とすると、総粗利益はかなり減ってしまう
ことになります。

 

結局、直販の値下げ拡販策が、
自分の首を自分で締めることになるのです。

顧客Pから見れば、代理店も直販サイトも
同じネット通販の競合に見えます。
価格の比較が簡単で、
低価格に流れます。

代理店は競争相手ではなく、
パートナーなのです。
顧客Pを代理店から奪ってはいけないのです。

つまり直販価格が代理店の販売価格を下回ることは
できないのです。

 

一方で、代理店は、キャンペーンで、
値下げ販売をするのは、独占禁止法上、
自由です。価格を生産者が
統制することはできません。

直販価格 >= 代理店販売価格

という関係は崩せません。

参考:メーカーが代理店の販売価格を決められるか?

 

では、直販で拡販するには、
どうしたらよいでしょうか?

 

次回につづく。